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オキシトシン・セロトニンの分泌を増やす。食で幸せになる方法とは


オキシトシンは「幸せホルモン」と呼ばれ、人同士や動物とのスキンシップによって分泌が増えるといわれています。幸せホルモンを増やすことはストレスや不安な気持ちの軽減に役立ち、毎日を幸せに送ることにつながるかもしれません。幸せホルモンを増やすために食事や生活習慣を見直すことで、前向きな心へと整えていけたら良いですね。

オキシトシンってどんなホルモン?

「幸せホルモン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ストレス社会の現代では、以前より耳にする機会が増えたかもしれません。数あるホルモンの中でも人の心を安定させる効果をもたらすものはこのような呼び方をされることがあります。幸せホルモンと呼ばれるホルモンは3種類あり、それがオキシトシン、セロトニン、ドーパミンです。

オキシトシンは女性の妊娠や出産、授乳時に分泌量が変動することから、「愛情ホルモン」とも呼ばれて注目されていました。オキシトシンは脳の視床下部で合成され、下垂体後葉に運ばれて放出されます。哺乳動物にとってオキシトシンは非常に重要なホルモンで、出産時には子宮を収縮させて分娩を促します。また、産後の授乳時にもオキシトシンの分泌が増えます。

オキシトシンには抗ストレス作用や抗うつ作用があり、例として母と子の関係を取り上げてみると、我が子を母乳で育てることにより、母親の母性行動が増えたりストレスを減らして血圧を下げたりするなど、健康的なメリットがあることが知られています。

つまり、オキシトシンの分泌は母子がスキンシップをとることで増え、双方に良い影響がもたらされます。母親のストレスを軽減することが良い循環を生み出し、お互いに愛情と信頼のある関係の中で良好な育児ができるようになるのです。※1※2

「三つ子の魂百まで」という言葉もあるほど、乳幼児期は母と子の愛を育むうえでとても大切な時期です。世界保健機構(WHO)では理想的な成長や発達を促すために、6カ月までは母乳で育児することを推奨しています。母乳を飲ませる時はもちろん、その行為のみならず親子の肌が触れ合うことや、子を抱いたりさすったりする行為が親子の愛を育てるのに役立ちます。※3

オキシトシンは社会行動にもメリットがある


主に母と子の親子関係における重要なホルモンとして知られていたオキシトシンですが、最近では必ずしもそのような限られた関係のみが恩恵を受けるものではないことが明らかにされてきました。実をいうとオキシトシンは日常生活においても放出され、社会行動や不安、ストレス反応などの調節に関わっているのです。

オキシトシンの役割は特に社会的な行動において注目されており、さまざまな研究が行われています。例えば、仲間に対する信頼感を増幅させたり、社会生活中における記憶の促進、さらにはストレスを緩和させたりする効果があることがわかってきています。また、自閉症スペクトラム障害の症状が緩和されたとの報告もされています。

オキシトシンは母と子だけではなく、家族や恋人や友達、動物とのスキンシップによっても分泌を増やすことが可能です。オキシトシンは分泌が増えることによって心が穏やかになり、精神的に安定した状態で過ごすことができることから「幸せホルモン」と呼ばれるようになったのです。※4

オキシトシンの分泌によってストレスが緩和され、精神的に安定した状態で過ごせば、ウェルビーイングも向上するでしょう。心身のバランスを整える方法について詳しくはこちらをご覧ください。

幸せとは、ウェルビーイングで心と体のバランスを考えよう


オキシトシンの分泌を促す食べ物はあるの?

オキシトシンはスキンシップや感謝する気持ちなどによって分泌が増えるホルモンです。そのため、これを食べれば分泌が増えるという特定の食べものはありません。一緒に過ごして楽しいと思える人と美味しく食事をすることなどがオキシトシンの分泌を促進させます。

一方、オキシトシンと同じく「幸せホルモン」と呼ばれているセロトニンは脳内の神経伝達物質のひとつで、ドーパミンやノルアドレナリンを制御して精神を安定させる働きを持っています。セロトニンの材料はトリプトファンと呼ばれる必須アミノ酸です。また、これと一緒にセロトニンの合成を助けるビタミンB6を摂るとより効果的です。

トリプトファンとビタミンB6を多く含む食べ物には次のようなものがあります。※1

大豆製品…豆腐、味噌、納豆など
乳製品…チーズ、ヨーグルト、牛乳など
その他…ピーナッツ、卵、バナナ、まぐろ、かつお

セロトニンの合成を助ける食品を効率よく摂ることができる、手軽なメニューのレシピ朝ごはんについてもご紹介しています。


「厚揚げの卵とじそば」は、セロトニンの原料であるトリプトファンを含む豚肉や厚揚げ、卵がしっかりと摂取できます。カラダの代謝を助けるビタミン、ミネラルは冷凍ほうれん草を使って手軽に。ほうれん草に多く含まれるビタミンCは抗ストレスビタミンの役割をしてくれます。

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ほかに、生クリームなど乳製品を使ったフルーツサンドもおすすめです。
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セロトニンは脳と腸の両方から分泌され、気分の安定や睡眠と密接な関係にあります。セロトニンは腸を動かす指令を出す際にも使われるので、腸内環境を整えて便秘を予防に努めることも大切です。また、運動をしたり日光を浴びたりすることでも増やすことができます。食事だけではなく生活面にも意識を向けましょう。※5 セロトニン分泌につながる正しい呼吸法腸内細菌についてもご参照ください。

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食事の面ではセロトニンの分泌が増えるようにトリプトファンやビタミンB6の摂取を心がけ、オキシトシンを増やしたいときは人や動物とスキンシップをとる機会を増やし、食事を美味しく食べることを意識すると良いでしょう。

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また、五感を使い、食べることに集中するマインドフルネスイーティングによって食への満足感を高めることができます。豊かな生活に繋がるマインドフルネスメソッドについてはこちらをご参照ください。

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ストレスを軽減する幸せホルモンを増やす食事や生活習慣に整えていければ、より幸せを感じられることでしょう。


<参考>
※1 愛情ホルモン・オキシトシンと心のきずなについて
https://www.jstage.jst.go.jp/article/iken/29/2/29_29-171/_pdf/-char/ja
※2 医療法人福寿会 梅田診療所 オキシトシン
https://www.fukujukaigr.or.jp/wp-content/uploads/2019/02/umeshin_H30_hormone02.pdf
※3 小児科学会誌 115巻8号 小児科医と母乳育児推進
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/saisin_110916.pdf
※4 自治医科大学 オキシトシンの社会記憶促進作用の解明
https://www.jichi.ac.jp/openlab/newsletter/h49_spletter.pdf
※5 ザ・ガードコーワ整腸錠 どうして腸は大切なの?
https://hc.kowa.co.jp/the-guard-kowa/intestinal-flora/relation/

<参考文献>
中嶋洋子監修(2016)『栄養の教科書』新星出版社p228


ライタープロフィール

佐々木優美(管理栄養士)

病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。