セロトニンは精神状態の安定に関わるホルモンです。セロトニンの分泌が低下すると不安やイライラなどの症状が現れ、うつ病やパニック障害の原因にもなります。ここでは、セロトニンと血糖値の関係性を解説し、セロトニンの分泌を増やすのに効果的な食べ物を紹介します。
最近よく聞くセロトニン。不足するとどうなる?
セロトニンは脳内で分泌される神経伝達物質のひとつであり、精神を安定させる働きを持っています。セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンから合成され、体の中では脳の中心部に位置する視床下部や大脳、脳幹を構成する延髄などに分布しています。
ストレスと深く関わるホルモンには、ノルアドレナリンやドーパミンなど、興奮時に放出されるホルモンと、この2つが分泌され過ぎないように調節するセロトニンがあります。セロトニンが不足すると感情が抑えられなくなり、平常心が保てなくなります。
精神状態を安定させるためにはこの3つのホルモンバランスが大切だといわれています。近年増加している不安やうつ、パニック障害などの精神症状は、セロトニンが低下し、ドーパミンやノルアドレナリンなど、神経伝達物質とのバランスが崩れることで引き起こされると考えられています。※1
また、セロトニンの低下には女性ホルモンの分泌減少が影響しており、更年期障害とも関係があるようです。女性ホルモンのエストロゲンは、セロトニンを介して感情の調節をしています。男性と違って女性はもともとセロトニンが少ないのですが、エストロゲンの分泌量が減るにつれて、落ち込みやすくなったりイライラしたりといった症状が出てしまうのです。
さらに、雨や低気圧などもストレスが溜まる場面が増え、セロトニンの分泌が低下しやすい傾向にあります。詳しくはこちらを参照ください。
・雨がつらい、低気圧で自律神経に不調が? 気象病への対策とは
セロトニンは健康のために重要な物質
セロトニンは私たちの健康にとって欠かせない物質です。世間では「幸せホルモン」と呼ばれて注目され、心の安定に役立つ物質だという認知が広がりつつあります。それでは具体的に、セロトニンがどのような働きをするのか見ていきましょう。
<セロトニンの働き>
活動時の意識をすっきりした状態にする
痛みの感覚を抑える
抗重力筋に働きかける
セロトニンの分泌が不足すると、寝起きが悪い、痛みを感じやすいなどの症状が現れやすくなります。また、重力に対する筋力が低下するため、背中が丸まる、まぶたが重くなるなどの症状が出ることもあります。
セロトニンはアミノ酸のトリプトファンから作られます。つまり、トリプトファンがなければセロトニンは産生されませんが、ここで必要となるのがインスリンです。ブドウ糖や砂糖を摂取することで放出されるインスリンは、トリプトファンが脳内に運ばれるのを促進し、セロトニンの産生を高めています。
また、砂糖の摂取は精神の安定や気分の改善に有効とされています。これは、砂糖を摂取すると脳の快感中枢が刺激されるからです。このように、砂糖と精神状態はセロトニン分泌の機序や快感中枢の刺激という部分において深い関係にあることがうかがえます。※3
食事を抜くと体内は低血糖状態になりますが、それを原因とする不安感やイライラが現れます。糖の摂取は血糖値を上昇させるとともに、トリプトファンからセロトニンを産生させる機序に働きかけ、精神状態を改善する効果も期待できるでしょう。
詳しくはこちらを参照ください。
・低血糖は怖い? 改めてわかる糖の重要性とは
・理由のないイライラの原因は糖不足って本当!?
・ケトン体っていったい何? 糖が不足すると増える危険物質の正体
・疲れた、イライラする、が引き金に? 低血糖にならない食生活とは
セロトニンを増やす効果的な食べ物とは
セロトニンを産生するトリプトファンは、体の中で合成することができないため、食事から摂取しなければなりません。また、セロトニンの生成にはビタミンB6も必要です。
トリプトファンを多く含む食べ物には、豆腐、納豆、みそ、しょうゆなどの大豆製品、チーズやヨーグルトなどの乳製品、さらにはバナナやごま、卵などがあります。トリプトファンは野菜などの植物性食品よりも動物性食品に多く含まれる傾向があります。また、ビタミンB6はにんにくやパイナップルなどのドライフルーツに多く含まれています。※4
また、セロトニンの産生にはインスリンが不可欠のため、糖を摂取することも必要です。食後に甘いデザートや飲み物を口にするのは、食事の満足感を高めるだけでなく、セロトニン産生を増やす為にも合理的です。
さらに、セロトニンは食事だけではなく日常生活の中でも増やすことができます。規則正しい生活はもちろんのこと、日光浴やリズム運動をすることでも増やせます。運動不足やゲームのし過ぎに注意するなど、セロトニンの分泌が低下しやすい生活をしないように気を付けましょう。
詳しくはこちらを参照ください。
・幸せホルモン『セロトニン』を増やす食事でハッピーになろう
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<参考>
※1 厚生労働省 eヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-074.html
※2 大森病院臨床検査部
https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/kensa/column/column20141027.html
※3 農畜産業振興機構
https://www.alic.go.jp/joho-d/joho08_000503.html
※4 山梨県厚生連
https://www.y-koseiren.jp/column/season/3224
ライタープロフィール
佐々木優美(管理栄養士)
病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。