日本初のりんご飴専門店として注目を集める「ポムダムールトーキョー」。おいしいりんご飴が食べられるということで、多くのりんご飴ファンが足を運んでいます。今回は代表取締役社長の池田喬俊さんがりんご飴に寄せる想いや、本物のりんご飴を作るために起こした行動を伺いました。
りんご飴の伝言ゲームを正すために
Q:ポムダムールトーキョーを始めたきっかけを教えていただけますか?
池田さん:りんご飴やりんごが好きでお店を始めたわけではありません。りんご飴にお祭りで出会って、違和感を覚えたのがきっかけですね。
Q:どのような違和感でしょうか。
池田さん:僕はもともとメディアの仕事をしていて、りんご飴を見たときに、これはどう撮っても美しくなるものだと感じました。でも食べてみたらまずくて。僕は「美しいは正義なり」という信念を持っていたのですが、それが裏切られました。伝言ゲームの入り口と出口で答えが変わってしまっているような状態です。見た目の美しさと味がガチャガチャになっているので、「どこかで嘘をついているのかな」と思いました。
りんご飴は自然界にある丸みを生かした美しい食品です。しかしりんご飴の可能性を真摯に、誠実に引き出している職人さんは、調べてみても見つかりませんでした。そこで次の日に合羽橋に調理器具を買いにいきました。自分で作るしかない、と思ったので。もしその時点でりんご飴専門店があったら満足しているはずなので、この店は作っていなかったかもしれません。
りんご飴は「気づき」を積み重ねた結果
Q:本物のりんご飴を自ら作ろうとした、ということですが、池田さんは昔から、自ら正解を求めるような生き方をされてきたのでしょうか。
池田さん:僕は最適解から逃げてきた時間が、人より多いかもしれません。出された宿題をまじめにやるタイプではなかったので。「今やるべきことは何かわかっていますよね」と言われてしまいそうな生き方をしてきました。誰かから教えてもらったことではなく、やってみて自分で気づいたことのほうが多いです。
Q:りんご飴も、自分自身で気づきを積み重ねていった結果ですね。
池田さん:そうですね。りんご飴は拳銃だ、と僕はいつも言っています。りんご飴は拳銃と同じように、誰にでも撃てるものです。銃口がどこに向けられて、弾にどういう意味が込められていて、それがどういう結果を生むのか、ということをいちばん意識してりんご飴を作っているのかもしれないですね。
りんごの決め手は農家さんとの信頼関係
Q:りんごは時期に合わせて変えているとのことですが、試食したり、りんご農家さんを訪ねたりすることはありますか?
池田さん:農家さんのところには、年に1回くらいは遊びにいっていますね。あちらも歓迎してくれるので、一緒にご飯を食べることもあります。
Q:農家さんとの信頼関係も築いているのですね。
池田さん:そうですね。農家さんのところにいくときは、あまり仕事としていかないようにしています。勉強させてください、というような感じですね。農家さんと交流する中で、りんごとの向き合い方に気づきます。りんご飴の伝言ゲームの入口に立っているのが農家さんなので、信頼関係は大事にしています。
りんご飴はなめるのではなく、噛んで完成する
Q:りんごと飴のバランスはどのように決めているのでしょうか。
池田さん:飴に関しては、あまり分厚くならないようにしています。ポムダムールの飴はなめるものではなく噛むものなので、噛んだときにどう感じるか、ということを考えています。ですが最終的な決め手は感覚や経験です。
あとは飴がべたべた溶けて泣いているように見せたくはないので、持ち帰ってもおいしく食べられるように品質管理をしています。その中で、味とのバランスも見ています。
信頼関係で成り立つ味
Q:ポムダムールトーキョーのりんご飴にはシナモンやココアなどの味があります。商品開発のポイントはありますか。
池田さん:味については自信がありますので、本当はプレーンだけでも良いと思っています。お客様が許してくれるかはわかりませんが、1回くらいはプレーンだけで出店してみたいです。
Q:従業員も商品開発に携わっているのでしょうか。
池田さん:会社でいう商品開発部、というものはありませんが、試食して味の感想を従業員と話し合うことはあります。ただ、りんごの品種を食べ比べてみる、ということはしていません。りんごに関しては僕の頭の中に最適解が全て入っているので。
Q:りんごの本質そのものは池田さんの経験から生み出しているのですね。
池田さん:むしろ4、5年やっていて、そこが定まってないのはおかしいですからね。農家さんのことも信頼しているので、この農家さんから届いたものなら大丈夫、と思っています。
りんご飴の伝言ゲームを正し、本物のりんご飴を作ろうと始めたポムダムールトーキョー。お菓子としておいしいりんご飴の裏側には、「美しいは正義」という池田さんの信念や、りんご飴にかかわる人との信頼関係がありました。後編ではお客様からの反響や今後の展望などに迫っていきます。