うだるような暑さが続くと体力が消耗し、なんとなく体がだるい、疲れが取れない、食欲がないという方も多いのではないでしょうか?いわゆる「夏バテ」にならないために重要なのは、なんといっても食事でしっかりと栄養素を補給すること。夏バテ予防に良いといわれている栄養素の一つに「クエン酸」がありますが、実際のところ効果はどうなのでしょうか?「クエン酸」の体内での働きや、とり方について解説します。
クエン酸って何?
クエン酸は食品中に含まれていると「すっぱい」と感じる酸味の成分の一つです。爽快な酸味が特徴的で、果物に多く含まれています。「すっぱい成分=ビタミンC」と勘違いされやすいのですが、実はクエン酸やリンゴ酸、酢酸、乳酸といった酸の量によって、酸味は決まってくるのです。
クエン酸は疲労物質を除去する?
以前は、体内に「乳酸」が蓄積することで疲労感を感じると考えられており、クエン酸は乳酸の生成を抑える作用があるとして、疲労回復効果が注目されていました。しかし、近年の研究により、乳酸は疲労物質ではないことがわかり、クエン酸、乳酸、疲労感には因果関係がないといわれています。※1
一方で、クエン酸を8日間または28日間継続的に摂取した結果、疲労感が軽減したという研究データもあり、摂取してすぐに疲労回復できるような即効性のあるものではありませんが、クエン酸をとることで疲労感の軽減を多少期待しても良いかもしれません。※2
疲労回復に関する記事はこちらにもあります
・「飲む点滴」米麹甘酒がすごい! 出勤や登校前に飲むと一日スッキリ
・適糖ライフのススメVol.9 疲労回復のための賢い食べ方は?
・適糖ライフのススメVol.14 疲れた時に甘いものが良いって本当?? 心や体の回復に良い対策を管理栄養士が解説
・最近疲れやすいのは脳のブドウ糖不足が原因??その対策とは?!
クエン酸はミネラルの吸収をアップ
クエン酸にはカルシウムや鉄といったミネラルを包み込んで溶けやすい形に変え、吸収を良くする「キレート作用」があります。※2
カルシウムの体内への吸収率は25~30%、鉄は15%程度といわれており、あまり吸収が良くありませんが、クエン酸を含む食品を一緒にとることによって吸収されやすくなります。※3
クエン酸を多く含む食品は同時にビタミンCも多く含んでおり、ビタミンCも鉄の吸収を良くする働きがあるため、すっぱい食べ物と鉄を多く含む食品(レバー、赤身肉・魚、大豆製品、緑黄色野菜など)の組み合わせは貧血予防にも良さそうですね。鉄をしっかり補給することによって、全身に酸素を運ぶことができるため、疲労回復にもつながります。
ミネラルが多く含まれる黒砂糖についての記事はこちらにあります
・黒砂糖は鉄、マグネシウム、カルシウムが豊富? 砂糖に含まれるミネラルとは
・【黒糖&ナッツでミネラル補給!】ナッツの黒糖キャラメリゼの作り方
クエン酸が多く含まれている食品
ではクエン酸が多く含まれている食品は何でしょうか。
・柑橘類
果物の中でも、特にクエン酸が多いのは柑橘類です。レモンが最も多く、ついでグレープフルーツ、オレンジの順に多く含まれています。※4
レモンはダントツで量が多いのですが、酸味が強く、そのまま食べることは難しいので、ドリンクの中に入れたり、ドレッシングや酢の物の酢の代わりに使ったり、揚げ物や炒め物、焼き物の仕上げの酸味づけに使用すると良いでしょう。暑い時期は冷たい麺類やパスタにかけたり、お刺身にかけてカルパッチョにしたりしてもいいですね。
・その他
柑橘類以外では、梅、キウイフルーツ、イチゴ、パイナップル、ミニトマトにも多く含まれています。夏はさっぱりと料理に梅干しを活用したり、間食や食後のデザートにキウイフルーツやパイナップルを取り入れてみたりするのはいかがでしょうか。ヨーグルトに入れると、クエン酸のキレート作用でカルシウムの吸収も良くなるので、栄養面でも良い組み合わせです。ドライマンゴーにも含まれているので、持ち歩いてさっと補給するのも良いでしょう。
クエン酸が多く含まれる「梅」に関する記事はこちらをご覧ください。
・梅の旬はいつ? 昔から人気の梅スイーツに迫る
・梅シロップをつくろう。初夏にオススメ! 美味しくて体に良い!
クエン酸を多く含むフルーツを使った「フルーツサンド」は下記の記事でご紹介しています
・【フルーツサンドレシピ】必須アミノ酸トリプトファンが豊富! キウイとバナナのヨーグルトクリームサンドの作り方 適糖おすすめレシピ
・フルーツサンドの中身は何が人気? 流行ったのはいつ?
クエン酸を多く含む食品には共通して爽やかな酸味と香りがあり、食欲が低下している時でも食べやすいという点で夏バテ予防に適しています。
クエン酸の他にも…疲労回復に良い食事
・夏野菜
夏の強い日差しによって体力も奪われますが、強くストレスを受けているのが「肌」です。紫外線によって体内で活性酸素が産生されると、シミ、シワの原因となります。活性酸素を取り除き、酸化の働きを抑えるためにはトマトやピーマン、パプリカ、カボチャなどの夏野菜に多く含まれているカロテノイドという抗酸化物質をとることが大切です。
・果物
暑さで食欲がなく、食が進まない…という時におすすめなのが果物です。果物にはブドウ糖や果糖といった糖質が多く含まれており、これらは消化が必要のない糖のため、素早くエネルギーになります。体を動かすためにエネルギーは必要不可欠なので、水やお茶などの飲み物ばかりではなく、エネルギーになるものを食べましょう。果物は汗とともに体から失われる水分、ミネラルも補給することができます。
・主食、主菜、副菜を揃える
疲労回復のために豚肉が良い、ウナギが良いということはよく聞きますが、豚肉やウナギには糖質をエネルギーに換えるのに必要なビタミンB1が豊富に含まれているため、これほどまでに夏バテ対策の食べ物といわれるようになりました。しかし、そこに因果関係はないので、豚肉やウナギ以外にも鶏肉や牛肉、大豆製品、卵など他のたんぱく質源(主菜)と、エネルギー源となりやすい糖質が豊富な主食をしっかり食べ、ビタミン、ミネラルの豊富な副菜を組み合わせ、食べたものをエネルギーに換えていくことが大切です。
「夏バテ」に関する記事は下記でも詳しく紹介しています。
・夏バテに効くような正しい糖の取り方とは?!
・適糖ライフのススメVol.12 コロナ禍の夏バテ対策。 予防に食べると良いのは○○??
・夏バテの疲れがとれない時の解消法。気を付けるポイント3つ!
「熱中症対策」に関する記事は下記をご覧ください。
・熱中症予防には、冷蔵庫の野菜や果物で作る栄養豊富な”デトックスウォーター”
・熱中症予防に!夏の上手な水分補給とむくみ対策のコツ
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(あわせて読みたい)
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【参考資料】
※1 厚生労働省:e-ヘルスネット「乳酸」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-045.html
※2 国立健康・栄養研究所:「健康食品」の素材情報データベース「クエン酸」
https://www.nibiohn.go.jp/eiken/info/pdf/k029.pdf
※3 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
※4 文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
ライタープロフィール
渥美 まゆ美
【管理栄養士/フードコーディネーター】
保育園栄養士、健保組合、大手料理教室の講師を経てフリーランスで活動後2016年株式会社Smile meal設立。
現在は出版、メディア出演、レシピ開発など体にプラスな料理の提案をすると共に、企業向け健康セミナーの講師や従業員の健康をサポートする料理教室、高齢者向け介護予防教室など健康サポート事業にも携わる。