日本で古くから飲まれている甘酒に注目が集まり、スーパーやコンビニなど身近なお店でよく見かけるようになりました。「飲む点滴」とも呼ばれている甘酒は、夏バテ予防に注目されているドリンクです。
発酵の力で作られた甘酒の種類と栄養、自然な甘味を活用したスイーツや料理をご紹介します。
米麹甘酒の製法と酒粕甘酒との違い
甘酒には米麹を原料にするものと、酒粕を原料にするものがあります。どちらも麹が発酵する働きを利用して作られた発酵食品です。では、米麹と酒粕でどのような違いがあるのでしょうか。
米麹甘酒は、米麹または米と種麹にお湯を加え、温度60℃前後を保って作られます。麹菌の働きが活発になる60℃前後にすることで、米のデンプンが分解されブドウ糖やオリゴ糖に変化します。そうしてできるのが、自然な甘味のする甘酒です。米麹から作られた甘酒には、アルコールは含まれていませんので子どもやアルコールが苦手の方でも安心して飲むことができます。
酒粕甘酒は、酒粕を水で割り、甘味をつけて作られます。初詣の神社や縁日などで振舞われることも多く、きっと皆さんも一度は酒粕甘酒を口にしたことがあるのではないでしょうか。
酒粕は、日本酒を作るときに残った搾りかすです。日本酒は、米と麹を原材料にして、麹菌による発酵と酵母菌のアルコール発酵によって作られています。そのため、酒粕にもアルコール分が残り、日本酒のようなフルーティーな香りや深いコクを楽しめるのです。
市販されている酒粕甘酒に含まれているアルコール分は1%未満ですが、酒粕から甘酒を作ると1%以上のアルコール分が含まれている可能性があります。これは、使用する酒粕によってアルコール濃度が異なるためです。アルコールに弱い方や妊娠中の方が酒粕甘酒を飲むときは注意しましょう。
米麹甘酒は夏バテ予防にぴったりのドリンク
米麹甘酒が「飲む点滴」と呼ばれ、体へ吸収されやすいブドウ糖やオリゴ糖をはじめ、ビタミンB 群、アミノ酸などが米麹甘酒には含まれています。また、米麹甘酒の酵素が消化吸収を助けると考えられていることから、健康のために甘酒を飲む人も増えています。
日本では古くから甘酒が飲まれていました。江戸時代の書物「守貞漫稿(もりさだまんこう)」には、夏に多くの甘酒売りが甘酒を売り歩く様子が記載されています。江戸時代は現在のように栄養状態や衛生状況が整っておらず、夏を乗り切るために甘酒を飲んでいたそうです。水分補給と栄養補給を同時にできる甘酒は、現在も夏バテ予防のドリンクとして注目されています。※1
現在ではひな祭りでも甘酒が飲まれています。ひな祭りについてはこちらで紹介しています。
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甘酒の味わいが飲みにくいと感じるなら、豆乳や牛乳、フルーツ酢などと割ると飲みやすくなります。冷たくしても温めてもおいしいので、季節に合わせて飲むこともできます。
スイーツや料理の材料に。調味料としても活用できる米麹甘酒
米麹甘酒はドリンクとして飲むほかに、スイーツや料理の材料にも活用できる食材です。おしるこ・ホットケーキ・ドレッシング・スープなど幅広く活用できます。
スイーツに活用する方法は簡単。砂糖などの代わりに米麹甘酒を取り入れてみましょう。おしるこにするなら、ゆであずきに甘酒を加えて甘味をつけます。ホットケーキミックスで作るホットケーキには、牛乳の代わりに甘酒を加えると、もっちりとした生地になります。
料理に活用するときもスイーツと同様です。ドレッシングでは、酢・サラダ油・塩・こしょうを混ぜ、甘酒を加えます。甘酒が加わることで甘味と、とろっとした風味がプラスされ、クリーミーなドレッシングに仕上がります。梅やわさびなど、ほかの食材を加えて味を変化させても良いでしょう。スープにするなら、食材をミキサーにかけたポタージュがおすすめです。甘酒の粒状も滑らかになり、とろっとしたスープになります。
米麹甘酒には酵素が含まれているので、肉や魚を漬け込むと素材の味を引き出し、加熱してもやわらかく仕上がります。味噌や醤油などと一緒に漬け込むだけで、味が決まります。このように、米麹甘酒は、ほかの食材と組み合わせるほか、調味料としても幅広く活用できるアレンジのしやすい食材です。
米麹甘酒は、古くから栄養補給のドリンクとして親しまれてきました。飲む点滴と呼ばれるように、食欲がわかない暑い時期や、忙しくて食事をしっかりと食べられないときの栄養補給におすすめのドリンクです。そのまま飲むだけでなく、さまざまな食材と組み合わせて活用してみましょう。
<参考>
※1 食と日本人の知恵 日本農村医学会雑誌
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm/61/6/61_835/_article/-char/ja/