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オリゴ糖が心の健康にも良いって本当!? 知られざる腸とメンタルヘルスの関係とは



近年、心の健康(メンタルヘルス)の維持が社会的な課題となっています。ストレスだけでなく、運動、休養・睡眠など、様々な要素が絡まり合っていることが明らかになっている中で、栄養・食生活との関係も言及されるようになり、精神栄養学という分野が注目され始めています。実は、次々と明らかにされつつある食事と心の健康の関連を説明する要素のひとつに、腸内環境が挙げられているのをご存知でしょうか。

今回は、腸とメンタルヘルス、そして「腸活」ブームによって注目されているオリゴ糖との関係を紐解いてみましょう。
 

まずは、オリゴ糖と腸の関係をおさらい!



オリゴ糖は、胃酸や消化酵素でも分解されず、大腸まで届き、ビフィズス菌などの腸内にすむ善玉菌の栄養源となってそれらを増やす働き(プレバイオティクス効果)があることから、特定保健用食品として認められています。
腸内環境は、私たちの美容・健康と深い関わりがあり、善玉菌は食中毒菌や病原菌による感染の予防、免疫力の維持や、発がん性をもつ腐敗産物の産生の抑制、ビタミン(B1・B2・B6・B12・K・ナイアシン・葉酸)の産生、血清コレステロール低下など、様々な良い影響を及ぼすことが明らかになっています。
よって、オリゴ糖を毎日の食生活に取り入れることで、手軽に腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整えられる「腸活」ができることから、美容・健康意識の高い人たちの中で注目を集めているのです。※1

腸内環境が、私たちのメンタルにも影響する!?



実は上記でご紹介したような身体面での健康だけでなく、精神面の健康(メンタルヘルス)にも、腸内環境が関わっていることが明らかになってきています。

腸と脳がお互いに作用しあっているという話を耳にしたことはありますか?これは「腸脳相関」と呼ばれるもので、緊張するとお腹が痛くなって下痢をしてしまうなど、ストレスが原因で腸内環境が悪化してしまうのも、この作用の影響と考えられています。また、それとは逆向きの作用として、腸内環境の状態が脳の働きにも影響を及ぼすことが少しずつ明らかになってきているのです。

不安やうつ・パニック障害などの精神症状を引き起こす原因の1つに、脳内で神経伝達物質として働くセロトニンの分泌低下が挙げられています。セロトニンは、脳内で喜び・快楽などの感情に関わるドーパミンや、恐怖・驚きなどの感情に関わるノルアドレナリンといった他の神経伝達物質を制御し、精神を安定させる働きがあります。

アミノ酸の一種であるトリプトファンを原料に作られるのですが、このトリプトファンの代謝に腸内環境が関わっていることが示唆されており、善玉菌が優勢な良い腸内環境だと、トリプトファンの代謝が促進されるというメカニズムが解明され始めているため、腸内環境メとンタルヘルスの関係性が脚光を浴びるようになりました。※2,3,4
 

オリゴ糖を摂ることって、メンタルヘルスに良いの?

では、腸内環境を改善する「腸活」をすることで、トリプトファンの代謝を促進することができ、セロトニンの分泌低下を防げる可能性があるのであれば、オリゴ糖を摂ることもメンタルヘルスに良いと言えるのでしょうか?

実は、オリゴ糖の摂取とメンタルヘルスの直接的な関連を調べたヒト研究はまだ数が少なく、はっきりと関連があると言い切れるエビデンスはありませんが、少しずつその関連性が明らかにされつつあるようです。

その中のひとつに、健康な成人45名を対象に、コルチゾールの分泌に対する、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖の影響を検討した、イギリスのオックスフォード大学で実施された介入研究(ランダム化比較試験)があります。
コルチゾールは、副腎皮質から分泌されるホルモンの一種で、心身がストレスを受けると急激に分泌が増えることから「ストレスホルモン」と呼ばれています。

この研究では、対象者をランダムに3群にわけ、それぞれにプラセボ(マルトデキストリン)、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖が入ったサプリメントを与え、3週間摂取を続けてもらった後、コルチゾールの分泌量を調べたところ、プラセボ摂取と比較してガラクトオリゴ糖摂取後に有意に低くなることが明らかにされました。フラクトオリゴ糖摂取後の影響は認められませんでしたが、この結果からガラクトオリゴ糖の摂取によってストレス耐性が高まる可能性が示唆されました。

まだまだこの研究結果だけでは、オリゴ糖を摂るとメンタルヘルスに良いとは言い切れませんが、今後のさらなる研究から目が離れません。※5
 

オリゴ糖の持つ可能性から、目が離せない!

私たちの腸内環境は、心身の健康に関わっていることが、近年次々と明らかにされています。腸内の善玉菌を増やす働きのあるプレバイオティクス(食物繊維、オリゴ糖)の摂取は「腸活」を成功させるために欠かせないポイントです。

そのままヨーグルトなどにかけたり、料理にお砂糖の代わりに活用したりと、オリゴ糖シロップを活用すれば、手軽に毎日の食生活に取り入れられるのがオリゴ糖の嬉しいところ。
玉ねぎや大豆、ニンニク、バナナなどの身近な食品からも摂取できることも前の記事でご紹介しましたね。

皆さんもオリゴ糖を活用して、心身ともに嬉しい効果が期待される「腸活」をぜひ実践してみてはいかがでしょうか。

 

【出典】

※1 厚生労働省|e-ヘルスネット|腸内細菌と健康
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html

※2 Carabotti M, et al. The gut-brain axis: interactions between enteric microbiota, central and enteric nervous systems, Ann Gastroenterol. 2015 Apr-Jun; 28(2): 203–209.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4367209/

※3 Maes M, et al. The new '5-HT' hypothesis of depression: cell-mediated immune activation induces indoleamine 2,3-dioxygenase, which leads to lower plasma tryptophan and an increased synthesis of detrimental tryptophan catabolites (TRYCATs), both of which contribute to the onset of depression. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2011 Apr 29;35(3):702-21.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0278584610005117?via%3Dihub

※4 厚生労働省|e-ヘルスネット|セロトニン
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-074.html

※5 Schmidt K, et al. Prebiotic intake reduces the waking cortisol response and alters emotional bias in healthy volunteers. Psychopharmacology (Berl). 2015 May;232(10):1793-801.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4410136/
(全て2020-09-17参照)

 

ライタープロフィール

藤橋ひとみ(管理栄養士)
I’s Food & Health LABO.(アイズフードヘルスラボ)代表。毎日の食事で心身のトラブルを予防・改善できる社会の実現を目指し、フリーランスの管理栄養士として活動中。 東京大学大学院、医学博士課程在籍。EBN(科学的根拠に基づく栄養学)の考え方を大切に、コラム執筆・監修、メディア出演等、健康情報を伝える活動や、食と健康の専門家のスキルアップ支援を行う。アトピーなど心身の不調を、食事改善で克服した経験から、毎日の食事で腸内環境を整えることの大切さを伝えている。また、大の大豆・発酵好きで、国内外にてその魅力を発信している。「腸活」をテーマにしたレシピ本「おいしく食べてキレイになる!おから美腸レシピ」が好評発売中。

ホームページ:https://is-food-health-labo.com/
ブログ:https://ameblo.jp/hitomi880807

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