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疲れた、イライラする、が引き金に? 低血糖にならない食生活とは


日常生活の中で、自分の血糖値を常に把握することは簡単ではありません。しかし、具合が悪くなったり、感情が変化したりすることで、血糖値変動のサインを察知することはできます。疲れやイライラは血糖値が下がった時に起こりやすい症状です。低血糖を予防する食事とはどのようなものか見ていきましょう。

危険な低血糖!その時、体にはどんなことが起こっている?

低血糖とは、その名の通り血糖値が低下した状態を指します。血糖値が60mg/dL程度になると冷や汗をかいたり震えたり、思考力が低下したりといった症状が現れます。さらに、30mg/dL以下の重度な低血糖になるとけいれん発作を起こしたりや昏睡に陥ることもあって大変危険です。

初めは異常を感じやすいのでブドウ糖の摂取などで対応できますが、低血糖を繰り返すうちに自覚症状が感じづらくなり、無自覚性低血糖と呼ばれる状態になります。車の運転中などに低血糖を起こすと事故につながり、命を失う可能性もありますので注意が必要です。

低血糖について詳しくはこちらをご覧ください。

低血糖は怖い? 改めてわかる糖の重要性とは

低血糖を引き起こす主な原因は、極端な食事制限や空腹時の運動、不適切な量のインスリン注射などです。過度な糖質制限も低血糖状態を招く危険があり、空腹状態が続くと脳は体が飢餓状態だと認識し、ケトン体という物質を増加させてしまいます。

ケトン体は血中の糖分が少ない状態で、エネルギーを産生できない場合に、中性脂肪が変化して作られる物質です。中性脂肪はそのままだとエネルギー源として利用できないため、肝臓でアセチルCoAに変換されてケトン体が作られます。

血中のケトン体が増加している状態をケトーシスと呼び、これが原因で血中が酸性になっている状態のことをケトアシドーシスといいます。ケトアシドーシスの症状としては腹痛や吐き気、呼吸の乱れなどがあり、進行すると意識障害や昏睡などが現れ、生命に関わる危険な状態になることもあります。※2

詳しくはこちらをご覧ください。

ケトン体っていったい何? 糖が不足すると増える危険物質の正体

低血糖はイライラの原因になりやすい?


低血糖になるとイライラすることがありますが、原因の1つとして脳内の神経伝達物質であるアドレナリンやノルアドレナリンの過剰分泌が挙げられます。

食後に急激な血糖値の上昇が起こり、その反動で3~4時間後には低血糖の原因となる反応性低血糖や、血糖値が上がったり下がったりを繰り返すタイプでは血糖値の急な低下に備え、交感神経が緊張状態となって神経伝達物質の分泌が増加します。興奮系のアドレナリンやノルアドレナリンは、大量に放出されると動悸や手足のしびれ、筋肉の強ばりなどといった身体的なものに加え、イライラや不安、恐怖心など、精神面にも影響を及ぼします。

詳しくはこちらを参照ください。

理由のないイライラの原因は糖不足って本当!?

なお、イライラの原因は糖不足以外にもあります。ストレスの多い現代社会では、多くの人が抑うつや不安といった症状に悩んでいます。また、イライラや疲れは更年期障害の代表的な症状の1つでもあります。イライラを緩和させるためには、まず原因を探ることが大切であるといえるでしょう。

詳しくはこちらを参照ください。

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低血糖にならない食生活を送りましょう


低血糖を予防するためのポイントを3つ紹介します。

1. 極端な糖質制限を避ける
ごはんやパン、麺類などの糖質を含む食品を過度に制限してしまうと、血糖値が上がらず低血糖を起こしやすくなります。情報に惑わされず、適正な量の糖質を摂取するように心がけましょう。

2. 空腹時に運動をしない
空腹時に運動をすると、血糖値が一気に低下してしまうことがあります。激しい運動をする時は、途中で糖質を補給するようにしましょう。

3. 高血糖になる食事を避ける
血糖値が上がるとそれを下げるためにインスリンが放出されます。しかし、急上昇と急降下を繰り返すうちに血糖値の調整が上手くいかなくなり、低血糖を起こしやすくなります。

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また、糖尿病の薬を飲んでいたり注射を打っていたりする場合は低血糖を起こすリスクが高くなります。薬の用法・容量は必ず守り、食事制限や運動は自己判断せず医師の指示に従うようにしましょう。

低血糖が起こらないように気を付けていても、急に起こってしまった場合は応急処置としてブドウ糖やスポーツ飲料、砂糖などすぐに体に吸収されるものを経口摂取しましょう。また、運転中に低血糖が起こった場合は、すぐに車を止めて対処します。

重度の低血糖ではけいれんや意識障害などの症状が現れます。運転している時などは事故のリスクも高まりますので、慎重に対処する必要があります。普段の食事は低血糖にならないためのポイントを意識して、バランスのとれた健康的な食生活を実践していきましょう。

※1 知りたい!糖尿病  低血糖の症状とは?原因・対処法
https://www.diabetes.co.jp/dac/coexistence/insulintherapy-lowglucose

※2 糖尿病ネットワーク Q438 ケトン体とはなんですか?
https://dm-net.co.jp/qa1000_2/2006/04/q438_1.php

※3 ブレインケアクリニック 低血糖症3つのタイプ
https://brain-care.jp/blog/2017/10/10/%e4%bd%8e%e8%a1%80%e7%b3%96%e7%97%87%ef%bc%93%e3%81%a4%e3%81%ae%e3%82%bf%e3%82%a4%e3%83%97/


ライタープロフィール

佐々木優美(管理栄養士)

病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。