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炭水化物は本当に悪者なの?


糖質制限の大ブームが起こってからというもの、健康やダイエットの話になると、なにかにつけて悪者扱いされるようになった「炭水化物」。実際に糖質制限ライフを実践されている方も多いのではないでしょうか?

しかし、炭水化物は主に主食に含まれる、私たちの大切なエネルギー源となってくれる栄養素。炭水化物は本当に悪者なのでしょうか?
炊きたてのホカホカごはんや大好きなパスタを泣く泣くあきらめていた方必見!その真実を探っていきましょう。

炭水化物ってなに?糖質との違いは?

「炭水化物抜きダイエット」「糖質制限」「低糖質」「ローカーボ」。一口に糖質を控えると言ってもいろいろな表現が混同して使用されていますよね。そもそも炭水化物と糖質、実はそれぞれ意味が異なります。

■炭水化物とは・・・
ヒトが消化吸収できる「糖質」と消化できない「食物繊維」の総称。糖質は体内に吸収されてエネルギーになりますが、食物繊維は消化吸収されず、ほとんどエネルギーになりません。※1)

■糖質とは・・・
炭水化物のうち食物繊維以外のものの総称。食物として体内に取り入れられエネルギー源となるもの。※1)

簡単にいうと「炭水化物=糖質+食物繊維」。糖質は、炭水化物の一部です。
巷で言われている炭水化物と糖質は意味していることにはっきりした違いはないようですが、「炭水化物抜きダイエット」などのように、安易に主食を抜いたダイエットを実行してしまうと、糖質と同時に食物繊維も不足してしまうので注意が必要です。食物繊維は腸内環境の改善や便秘予防、血糖値やコレステロール値の上昇を抑えてくれるなどの働きがあり、ダイエットには逆に必要不可欠となる栄養素。日本人はただでさえ不足しがちな栄養素でもあります。※2)

同じように表現されていても、体の中での働きが微妙に異なることを覚えておきましょう。


炭水化物は悪者なのか?

では、そんな炭水化物は本当に体にとって悪者なのでしょうか?結論からいうと、答えはNoです!

炭水化物は、体内で「ブドウ糖」まで分解され、脳や筋肉を動かすための重要なエネルギー源となります。車で例えるといわばガソリンのようなもので、すぐにエネルギーとして利用することが出来ます。不足すると脳がうまく働かなくなりぼーっとしたり、筋肉のエネルギーが不足して疲れやすくなったりと、燃料切れで体が上手く機能しなくなり、元気に動くことができなくなります。

それほど重要な働きを担っている炭水化物が悪者とされる理由はどこにあるのでしょうか?それは、摂りすぎてしまった余分な糖質が「中性脂肪として溜め込まれてしまうから」です。※1)

簡単にメカニズムを説明すると、糖質を摂取すると当然血糖値が上がりますが、血糖値を下げようと働くのが「インスリン」というホルモン。糖質を過剰に摂取すると、上昇した血糖値を下げるためインスリンもそれに反応して大量に分泌されることになります。そのインスリンに脂肪合成を促進する作用があるため、インスリンの分泌を抑えるためには、糖質の摂取を減らすことで脂肪合成を防ぐことができ、ダイエットにつながるというわけです。※3)

糖質制限、低血糖の影響についてはこちらでご紹介しています。
糖質制限と血糖値スパイクの関係について
ケトン体っていったい何? 糖が不足すると増える危険物質の正体
疲れた、イライラする、が引き金に? 低血糖にならない食生活とは

血糖値はたんぱく質や脂質でも上がりますが、やはりダイレクトに大きな影響を与えるのは糖質。こう聞くと、体を動かすためのエネルギーはたんぱく質や脂質で賄えばいいのでは?と思ってしまいますが、たんぱく質は過剰に摂取すると腎臓に負担がかかったり、脂質は摂りすぎるとコレステロール値が上がり血管を詰まらせる原因になったりと、私たちの体はそう単純ではないのです。

大切なのは、それぞれの栄養素の役割を理解して、どれも過剰や不足がおきないように適量を守ってそれぞれの持ち場でしっかりと働いてもらうこと。体にとって重要な役割を担っている炭水化物も、過剰に摂ってしまうことで悪者になりかねません。次は、そんな炭水化物と上手く付き合っていく方法をご紹介します。

炭水化物も食べ方によっては悪者に!上手く付き合う方法は?

●炭水化物の1日に必要な目安量は?
まずは炭水化物の1日に必要な量を知りましょう。主食を3食食べる想定でみると?

ごはんなら・・・1食にごはん茶碗1杯(150g)
パンなら・・・1食に食パン6枚切り2枚
麺なら・・・1食に乾麺で80g

炭水化物の1日に必要な量は、1日に食事から摂取するエネルギーの50~65%に相当する量です。例えば成人女性の1日の必要なエネルギーは1700~2000kcal程度。1日2000kcal摂取するとしたら、1日250~325gの炭水化物が望ましい量になります。当然主食だけでなくフライの衣、調味料の砂糖、芋類などにも炭水化物は含まれますのでそれらを考慮すると主食で必要な量は上記が目安になります。※4)


●炭水化物を食べる時は、食物繊維も意識!
最初にご紹介した通り、炭水化物には食物繊維も含まれます。食物繊維には、腹持ちがよくなるうえ、血糖値の急激な上昇を緩やかにしてくれる効果があるため、インスリンの分泌も抑えることにつながります。白米より玄米ごはん、食パンよりライ麦パンなど食物繊維を多く含む炭水化物を選ぶと良いでしょう。

糖質と食物繊維についてはこちらでご紹介しています。
正しく知りたい!!糖質と食物繊維の関係とは!?
ライ麦とは、ライ麦は痩せる? 太る? 体にいいの? 管理栄養士がわかりやすく解説します。

●炭水化物単体での摂取に注意
血糖値を上げ、インスリンの分泌を促進するのは糖質です。しかし、食物繊維同様に、たんぱく質や脂質と併せて摂取することで血糖値の急激な上昇を抑えることができます。おにぎりを食べるなら鮭おにぎりや焼肉おにぎりなどたんぱく質が入ったものを。丼ものより、野菜やたんぱく質をバランスよく一緒に食べられる定食がおすすめ。野菜やたんぱく質からは糖質をスムーズにエネルギーに変換してくれるビタミン類も摂取でき一石二鳥。


血糖値の急激な上昇を抑える食事についてはこちらでご紹介しています。
あなたは大丈夫??健康診断でも気づけない血糖値スパイク!!今日からできる予防方法とは!?
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昨今なにかと悪者扱いされる炭水化物ですが、私たちが生きるために必要不可欠な栄養素です。ただし、食べ方を間違えると簡単に悪者になってしまうのも事実。適量を守り、上手に付き合うことで、炭水化物も味方につけて毎日元気に過ごしましょう。


※1)厚生労働省e-ヘルスネット「炭水化物/糖質」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-018.html
※2)厚生労働省e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
※3)厚生労働省e-ヘルスネット「インスリン」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-011.html
※4)日本人の食事摂取基準(2020年版)


ライタープロフィール

渥美 まゆ美
【管理栄養士/フードコーディネーター】

保育園栄養士、健保組合、大手料理教室の講師を経てフリーランスで活動後2016年株式会社Smile meal設立。
現在は出版、メディア出演、レシピ開発など体にプラスな料理の提案をすると共に、企業向け健康セミナーの講師や従業員の健康をサポートする料理教室、高齢者向け介護予防教室など健康サポート事業にも携わる。