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ブドウ糖とは? 糖質とは? 脳とカラダが糖を欲する本当の理由


疲れた時に甘いものが食べたくなることはありませんか?これはブドウ糖と脳の働きが密接に関わっているために起きる現象です。ブドウ糖は体を動かすために必要な栄養素で、脳にとって唯一のエネルギー源にもなる栄養素です。ブドウ糖と糖質の違いについてまとめ、疲れた時に甘いものが欲しくなるメカニズムについて解説していきます。

糖質とブドウ糖の違いは?

まずは、糖質とブドウ糖の違いについて解説していきます。

糖質というのは栄養素の名称であり、ブドウ糖を含む糖の仲間を指す総称で炭水化物から食物繊維を除いたものです。糖質は主食であるごはんやパン、麺類などに多く含まれています。糖質にはブドウ糖のような単糖類から多糖類、糖アルコールなどがあり、体を動かすエネルギーを作り出す働きをしています。ただし、体にとっては必要不可欠の栄養素ですが、過剰にとり過ぎると脂肪として体に蓄えられ、肥満や生活習慣病の原因になるので注意が必要です。※1

一部の人たちに流行している「ケトジェニックダイエット」は、糖質を大幅に制限して体内の糖質を枯渇させるというダイエット法です。この方法によるダイエットは糖質の代わりにケトン体という物質を作り出し、これをエネルギー源にすることで内臓脂肪や体脂肪の減少を早める効果があります。※2

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ブドウ糖は糖類の最小単位であり、自然界に最も多く存在している単糖類です。ブドウから発見されたため日本ではブドウ糖と呼ばれることもありますが、化学の分野ではグルコースという名前で呼ばれています。

血中に存在するブドウ糖の量は血糖値に影響し、食事をすると血中のブドウ糖濃度が高くなるため、血糖値が上がります。糖質の一部であるブドウ糖は分子が小さく、素早く体に吸収されるので即効性があります。こうした特徴を持つことから勉強に集中したい時や、運動前のエネルギー補給として用いられることもあります。

糖質とブドウ糖は広義で同じものを指しています。しかし、糖質は大きな栄養素の分類でブドウ糖は糖質の仲間の1つであるということを整理して理解しておくとよいでしょう。

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疲れている時に甘いものが欲しくなる理由とは?


疲れていると甘いものが食べたくなりませんか?疲れている時というのは、実際に脳や体のエネルギーが失われています。そのため、肝臓に貯蔵されていたグリコーゲン(多糖類の一種)が枯渇して血中に糖分を補給できなくなり、結果として血糖値が下がってしまいます。そして、血糖値が下がると今度はそれを上げようとして、体が自然と甘いものを求めるようになっているのです。甘いものが食べたいという欲は、体が疲れているサインであると捉えましょう。※3

低血糖状態の症状は発汗や手足の震え、頭痛、目のかすみなどが挙げられ、重いものでは異常行動や昏睡などが見られることもあります。ここまでの症状は糖尿病の既往があったり、厳しい飢餓状態になったりしないと現れる可能性は少ないですが、めまいや疲労感、集中力の低下といった軽い低血糖状態は誰にでも起こりうるものです。※4

ブドウ糖は脳が唯一エネルギー源として使える栄養素です。そのため、たんぱく質や脂質を摂っても脳の働きを活性化させることはできません。「早寝早起き朝ごはん」という標語がありますが、これは朝食を食べないと学校や仕事に支障が出ますよという意味を含んでいます。朝食は一日の中でも最も大事な食事です。朝食をしっかりと食べていれば、集中力アップや疲労感の軽減に効果が期待できるかもしれません。

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甘いものとの付き合い方を見直そう


糖質が不足すると低血糖を起こし、様々な症状が現れますが、過剰にとり過ぎても体にはよくありません。食事から摂取する糖質とのバランスを見ながら適量を守ることが大切です。

ただし、デザートやスイーツなどのおやつに当たる嗜好品は、それを味わう楽しさといった心理的な効果の方が大きいものです。だからこそ、食べ方や付き合い方には十分な注意が必要なのです。

甘いものを一度に食べると、急激に血糖値が上がり、そのあと急降下する状態が起こります。これを血糖値スパイクといい、疲労感や眠気の原因となったり、長期的には動脈硬化の進行につながり、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを高めたりする原因となります。このような状態を防ぐためにも、甘いものは好きなだけ食べるのではなく、食べ方や量を工夫することが大切です。

・量を決めて食べる
大きな袋に入っているものなどは、一旦開けてしまうと食べるのを止められなくなってしまうこともあります。小さめのお皿を準備して、その日に食べる分の量を決め、おかわりをしないようにしましょう。

・時間を決めて食べる
おやつを食べることで特に太りやすい時間帯は夜です。肥満細胞の働きが最も弱まる午後の3時頃は、理論的にも太りにくいと考えられています。おやつを食べるなら次の食事に影響のない量をこの時間帯に摂るのがおすすめです。

・果物を食べる
甘いものが欲しい時は、低カロリーの果物を選ぶという方法もあります。甘いものが食べたいという欲求を満たすことができますし、不足しやすいビタミンやミネラルなどの栄養素も摂取できます。果物にも色々な種類がありますので、日替わりで試してみるのも楽しいですよ。

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甘いものには身体的にも心理的にも疲れを緩和させてくれる働きがありますが、摂り過ぎても摂らなさ過ぎても体にはよくありません。食事全体のバランスや、摂取カロリーを意識しながら上手にとり入れていきましょう。


※1 eヘルスネット 炭水化物/糖質
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-018.html

※2 宮澤医院 ケトン食の効果と実践のための8つのポイント
https://miyazawaclinic.net/food/ketogenicfood/

※3 100年人生レシピ 疲れて「甘いもの」を食べるときに知っておいて欲しいこと
https://special.nissay-mirai.jp/jinsei100y/hints/zCJGI

※4 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター
https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/040/050/05.html
※5 外科と代謝 栄養49巻6号 2015年12月
 生体リズム研究の現在 ―時計遺伝子の機能と疾患の接点を中心としてー池田正明
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssmn/49/6/49_319/_pdf/-char/en


ライタープロフィール

佐々木優美(管理栄養士)

病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。