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ファイトケミカル(フィトケミカル)とは?第七の栄養素の正体


私たちの身体を作ったり、健康を管理したりしている栄養素。食事の際は意識しないかもしれませんが、栄養表示を確認したり、成分の名前を調べたりしてみるだけでも身近に感じるかもしれません。今回は、第七の栄養素と呼ばれている食品成分についてご紹介します。

栄養素と成分の違いについて

栄養素は私たちが生きていくために必要な成分です。糖質と脂質は身体を動かすエネルギーとなり、たんぱく質は身体を構成するもとになります。これに、体内の様々な働きを調整するビタミンとミネラルを加えたものが五大栄養素です。※1

五大栄養素は食品の成分を表記した「食品成分表」にも掲載されています。例えば、ごはんに含まれる食品成分を調べたい時に食品成分表を見ると、どの栄養素がどのくらい含まれるのか分かるようになっています。

また、人が健康的に生きていくためには、適切な量の栄養素を摂取することが必要です。もっとも、ただ摂れば良いというわけではなく、何をどのくらい摂るかが重要で、これについては「日本人の食事摂取基準」に掲載されています。

しかし、生きていくために必ずしも重要な成分でなくても、摂取することで身体に良い作用をもたらす成分も存在し、それらは「第七の栄養素」と呼ばれて健康効果が注目されています。
なお、食物繊維は第六の栄養素といわれており、整腸作用など身体の中で有用な働きをすることが注目されています。※2

五大栄養素にはないもの?「第七の栄養素」の正体とは


第七の栄養素は最近になって注目されてきたもので、はっきりとした定義があるわけではなく、名称についてもあくまで造語です。どのような成分かというと、野菜や果物、豆類など、主に植物性の食品が持つ苦みや渋み、香り、色素のもととなるもので、その総称としてファイトケミカル、またはフィトケミカルと呼ばれています。

ファイトケミカルには一日の適量やメカニズムなど、解明されていない部分が多く、食事摂取の基準を決められない側面があって、現時点では様々な研究データを読み解き、参考にするしか方法がありません。※3

それでは、代表的なファイトケミカルをご紹介します。どのような食品に含まれ、どのような種類があるのか確認してみましょう。

・ポリフェノール(フラボノイド系)
赤ワインやブルーベリーなどの色素に含まれているアントシアニンや、お茶の渋み成分であるカテキンがあります。ヒトの体内で強い抗酸化力を発揮し、細胞の酸化を防止します。これにより、老化や生活習慣病のリスクを低下させることが期待されています。

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・カロテノイド
ニンジンやカボチャのカロテン、ミカンのβ-クリプトキサンチン、トマトのリコピンなど、色の濃い野菜に含まれている成分です。ポリフェノールは水に溶けやすい性質を持っていますが、カロテノイドは油脂に溶けやすい性質があり、油と一緒に摂取すると体に吸収されやすくなります。

・含硫化合物
ダイコンやワサビに含まれる辛み成分のイソチオシアネートや、玉ネギやキャベツに含まれるシステインスルホキシドがあります。これらは抗酸化作用の他に、血行を良くする、肝臓や消化管に対する解毒酵素の活性化、抗菌作用などの働きがあります。

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ファイトケミカルは効果的に摂りましょう


ファイトケミカルには抗酸化作用があり、活性酸素(呼吸で取り込んだ酸素が体内で通常よりも活性化したもの)の働きを弱めてくれます。生活習慣病の予防に役立つ一方で、薬やミネラル成分との相互作用には注意が必要なので、その点に気を付けながら上手に取り入れましょう。また、ケトジェニックダイエット(ケトン体を利用したダイエット)においては厳しい食事制限があるため、ファイトケミカルを摂取することが難しい場合もあります。過剰な食事制限にも気を付けてくださいね。

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・いろいろな食品を取り入れる
食品には1つだけではなく、様々な成分が含まれています。それらが互いに効果を高め合ったり、助け合ったりして体の機能に役立っているのです。しかし、一方では阻害しあう成分も存在します。体に入った成分が全てそのまま体に吸収されるというわけではないので、色々な食べ物をまんべんなく食べるように心がけましょう。

・こまめに摂る
ポリフェノールは水に溶けやすい性質をもっています。そのため、短時間で作用しますが、効果は長く続かないとされています。しかし、ポリフェノールに関する研究はまだ数が少なく、明らかになっている部分はわずかであるのが現状です。さらに、ポリフェノールは多種類存在するため、ひとまとめにして適量や作用時間について述べることは難しいといえます。

現在のところでは、ポリフェノールの良い摂り方としてこまめに分けて摂取する方法が推奨されていますので、お茶などの取り入れやすいものを意識的に分けて摂取してみると良いでしょう。

野菜や果物といえばビタミンやミネラルばかりに注目しがちですが、他にも身体に有益な成分が含まれているということを知っておきましょう。野菜は1日350g、果物は200gを摂ると良いとされています。普段の食事で積極的に取り入れて、健康管理に役立ててくださいね。

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※1 大塚製薬 カロリーメイト 栄養補給に関する基礎知識
https://www.otsuka.co.jp/cmt/nutrition/

※2 厚生労働省e-ヘルスネット
healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html

※3 日本クリニック株式会社 食物繊維・ファイトケミカル
https://www.japanclinic.co.jp/counseling/detail.php?id=44#:~:text=%E3%80%902%E3%80%91%E7%AC%AC7%E3%81%AE%E6%A0%84%E9%A4%8A%E7%B4%A0,%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%95%E3%82%93%E5%AD%98%E5%9C%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

※4 公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット ファイトケミカルとは
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/phytochemical.html

※5 公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット ポリフェノールの種類と効果と摂取方法
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shokuhin-seibun/polyphenol.html

※6 太陽化学株式会社 食と健康Lab
https://www.taiyokagaku.com/lab/column/05/


ライタープロフィール

佐々木優美(管理栄養士)

病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。