糖質と脂質とは本来どういったものか??
糖質はこれまでのコラムで見てきたように重要なエネルギー源です。脳を含めてあらゆる組織にとって重要なエネルギー源で、摂取してすぐにエネルギーとなります。
余った糖質はグリコーゲンの形で貯蔵されます。グリコーゲンの形で貯蔵されるだけでなく、時には中性脂肪に変換されて貯蔵される場合もあるため、糖質をとりすぎたり、運動不足などで全然エネルギーを消費しない生活を送ったりしていると太ってしまうこともあります。
一方、脂質も重要なエネルギー源ではありますが、糖質と比べてエネルギー源として長期にわたって蓄えておくことができるため、即効的というよりかは、必要なタイミングに合わせてエネルギー源として使用されるというところが少し違った点です。加えて、エネルギー源になるだけでなく、細胞膜を構成するなど体を構成する重要な役割もあります。単純なイメージとしては、糖質があるうちは糖質をエネルギーに変換して、糖質が使えなくなってきたら脂質がエネルギーとして使われるようになるという感じで覚えておいても問題ないかと思います。
脂質にはどんなものがあるか??
脂質は化学構造の違いによって分類すると理解しやすいです。まず単純脂質として中性脂肪があります。これはまさにオーソドックスな脂質です。それに対して、脂質が他の物質と複合体を形成している複合脂質としてリン脂質、糖脂質、リポタンパク質があります。これらはエネルギー源というよりかは体を構成するものになります。また、誘導脂質としてステロール類があります。これはいわゆるコレステロールになります。脂質とコレステロールは同じものかと言われたら半分はそうで、半分は違うというイメージになるかと思います。
このコレステロールはステロイドホルモンなどの原料となりますので、これもエネルギーというよりかは、生体のさまざまな機能を担っているというイメージで覚えておくと良いです。
いずれにしろ、脂質が不足すると、エネルギー源として蓄積できないだけでなく、生体の複雑な構造や機能を維持できなくなるということは理解しておくべきでしょう。
脂質の重要な構成要素とは??
今回はエネルギー源というのがキーワードなので、脂質の中でもその役割を果たす中性脂肪に焦点を当てて見てみます。
オーソドックスな脂質である中性脂肪はグリセリンと脂肪酸から構成されており、脂肪酸の違いが重要となってきます。脂肪酸は大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。
前者は脂肪酸の構造の中に炭素間の二重結合がないもの、後者はそれがあるものになります。さらに後者のうち、二重結合が1つのものを一価不飽和脂肪酸、2つ以上のものを多価不飽和脂肪酸と言います。
多価不飽和脂肪酸はさらに二重結合がどこにあるかによっても分類されています。3番目にあるものをn-3(ω-3)系脂肪酸(いわゆるオメガ3脂肪酸)、6番目にあるものをn-6(ω-6)系脂肪酸(いわゆるオメガ6脂肪酸)と呼んでいます。そして、脂肪酸のうち、食事からとらなければいけないものを必須脂肪酸と言い、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸がそれにあたります。生体内において重要な役割を果たす物質の中にはアラキドン酸から作られるものも多く、この点からも脂質はきちんと適量を毎日摂取した方が良いと言えます。
なお、不飽和脂肪酸は植物や魚の脂に多く含まれているもので、血中脂肪や血中コレステロール量を低下させてくれるため積極的に摂取することが推奨されている一方で、飽和脂肪酸は乳製品、肉など動物性脂肪に多く含まれており、逆に血中脂肪や血中コレステロール量を増加させるために、あまりとりすぎないようにと言われています。
昔から日本食が完全健康食と言われている理由の1つとしては、野菜や魚を中心としたメニューで構成されていることが挙げられます。
糖質制限と脂質制限の違いとは??
糖質制限は血糖値が高めの方や短期間に確実に痩せたいという方には向いています。
ただし、糖質が不足しすぎると、体が疲れやすくなったり、集中力が低下したりするので、スポーツを日常的にする方や勉強を毎日する受験生たちにはおすすめできません。
他方、脂質制限は普段から油物を多く摂取している方や明らかに中性脂肪がお腹周りについている肥満の方には適しています。裏を返すと、全然肥満ではない方、ただの水太り(むくみがひどいため太っているように見える方)、普段から油物をあまり摂取していない方には向いていないと言えます。動物性脂肪食品を大量に摂取する欧米人に比べて、日本人はどちらかというと太っていると言っても脂肪太りではなく水太りが多いので、痩せなければとやみくもに脂質を減らしすぎると健康に害が出てくることが多いです。
前述したように脂質はエネルギー源としてだけでなく、体の構造や機能を維持するのにも必須ですので、幅広く不具合が生じてきます。具体的に見てみると、肌荒れ、免疫能低下、低体温、ホルモンバランスの乱れ、脳の機能低下によってうつ症状になりやすくなるなどです。
こう見てみると、糖質制限よりも脂質制限の方がリスクは大きくなるような印象も受けます。いずれにしろ、糖質と脂質に関しては、どちらもとりすぎはもちろんダメですが、とらなさすぎてもダメということになります。これは当たり前の結論ですが、この当たり前のことが意外とできていない方が少なくないです。
糖質と脂質の違いについて今一度きちんと正しい知識を持ち、健康的な生活につなげてください。
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