今やSDGsという言葉はあらゆる場面で聞かれるようになりました。SDGsとは2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことで、2030年までに達成したい国際的な目標として17のゴールが設定されています。栄養学は全ての生活においてベースとなることから、SDGsの全項目と関りがあるといっても過言ではありません。未来の食と健康について、栄養という視点から見ていきましょう。
サステナブルってどういう意味?
SDGsのSは“Sustainable=サステナブル”の頭文字です。音楽やファッション業界など、様々な分野で使われることが増えており、注目度の高さが伺えます。では、サステナブルという言葉の意味はどういったものなのでしょうか。
サステナブルは二つの語句が組み合わさってできた言葉です。”sustain=持続する”と”able=できる”からなり、「持続可能な」「ずっと続けていける」という意味を持っています。一番わかりやすいのが環境問題で、住みやすい環境を維持するためにはどうしたら良いかという視点でサステナブルな取り組みが提案されています。
地球温暖化を始めとする環境問題は、日本でもかねてより国民全員で取り組む問題とされ、環境に配慮されたあらゆる取り組みがされてきました。脱プラスチックの動きやソーラーパネルの設置も環境問題を意識したものです。
自然や環境は貴重な資源です。これらを守り、平和で豊かな生活をし続けられる社会を「サステナブルな社会」といいます。工業的な発展は素晴らしいことですが、現代はそれがもたらす影響を考え、環境に配慮しようとする意識とそのための行動が求められている時代だといえるでしょう。
SDGsにはどのような目標があるの?
私たちの食事を構成する食材は、農産物や畜産物、海産物など、自然環境とは切っても切り離せないものばかりです。目の前に食材があることを当たり前のように感じる中では、意識するのが難しいかもしれませんが、例えば海にいる魚が獲れなくなれば、私たちは魚を食べることができなくなってしまいます。
毎日食事ができる今のような環境がこの先もずっと続くとは限らないのです。現存する資源を大切にし、今後も守っていくことが、環境のためであり、自分たちの生活のためにもなります。
それでは、SDGsに挙げられた目標の中で、食と関係の深い項目を見てみましょう。
・飢餓をなくそう(SDGs目標2)
世界に目を向けると、明日の食べ物が手に入るかわからないほどの食料難に苦しんでいる人もいます。この目標では、まず誰もが一年中安全で栄養のある食料を手に入れられることを挙げています。さらに、栄養不良によって成長が妨げられる子どもを減らすこと、食料生産者の生産量と収入を倍にすること、災害が起きてもすぐに回復できるような農業の仕組みを作ることなどが掲げられています。
・作る責任、使う責任(SDGs目標12)
食品ロスは大きな問題です。貴重な資源を無駄遣いしているだけではなく、ゴミが増えることによって環境に負荷をかけています。この目標では、店舗や消費者が捨てる食料の量を半分に減らすとしています。まずは作る人たち、そして購入する人たちの意識も大切です。
・すべての人に健康と福祉を(SDGs目標3)
健康の基本は毎日の食事から。まずは感染症の予防と命を失う乳幼児の数を減らすことが目標とされています。特にアジアやアフリカなどの熱帯地域では、衛生状態や栄養状態が良くないため、子どもの死亡率が高くなっています。誰もが基本的な保健サービスを受けられ、必要な情報を得られるように環境を整備することが必要です。
もちろんこのほかにも食に関連する多くのゴールがあるのですが、まずは飢餓に苦しむ人たちを無くし、安心安全な食料の供給を確保し、無駄な食べ物の廃棄をなくすことが重要です。そのためにも海や陸の生態系を維持し(SDGs目標13、14、15)、貧困地域での農業を支援したり(SDGs目標1)、安全な飲料水へのアクセスを可能にしたりすることも大切です(SDGs目標6)。
今後ますます地球規模の課題を背景にしながら、食を通じて社会に貢献する提案をする必要があるでしょう。※2
サステナビリティに取り組む栄養士。SDGsに積極的なチャレンジを!
ご紹介した目標以外にも、貧困や環境、人権に関する課題解決のための目標が設定されています。直接的に栄養と関わる課題ではなくても、栄養は生活の基盤であり、栄養士という職業の特性上、全てに関連づけて考えることが可能です。
日本では医療が進化したことにより、大きな病気でも治るものが増えてきました。しかし、大切なのはまず病気にかからないこと。特に生活習慣病は食生活と関連があるため、健康的な食生活を送ることで病気のリスクを減らせるのです。
SDGsの取り組みは2015年から2030年と長く、とてもスケールの大きな話に聞こえます。しかし、これらは日常の積み重ねを大きく捉えたもので、私たちの身近なところにも様々な問題が潜んでいます。まず、私たちができることは身の回りの課題に目を向けることであり、それから課題解決に向けてスモールステップで行動に移すことが大切です。
そのためにも多くの栄養士は、これらの持続可能な管理目標も考慮し、食材や栄養素に関する「地球と健康に優しい食生活」の提案を行っています。
例えば、糖は過剰摂取すれば肥満につながりますが、適切な糖の摂取は体の健康を維持することにつながります。
詳しくはこちらを参照ください
・話題のオリゴ糖が摂れる食品を活用した管理栄養士おすすめのかんたん腸活レシピ3選
・砂糖の種類や味や色の違いで栄養は変わる!? いい砂糖と悪い砂糖とは?
・最近よく聞くケトジェニックと糖質制限って何が違うの?
また、最近では、栄養バランスの偏りかつ栄養過多によって、栄養失調になっている方も多いといいます。不調が続く場合は、気づかないうちに栄養失調になっている可能性もあります。詳しくはこちらを参照ください。
・栄養失調の初期症状とその対策法とは?!
※1 ベネッセグループ サステナブルとは?SDGsに向けた世界の取り組み
https://www.benesse.co.jp/brand/about/about_sustainability/
※2 UNICEF SDGs club
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/
ライタープロフィール
佐々木優美(管理栄養士)
病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。