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練りきりってなに? 上品な甘さが魅力! 目でも楽しむ四季を彩る和菓子の世界

和菓子店に並ぶ、彩り豊かな練りきり。練りきりの色や形は趣があり、思わず目を奪われてしまいます。見た目の美しさだけでなく、滑らかな口当たりと、上品な甘さを楽しめる和菓子です。いったい練りきりは、どのような素材や道具を使って作られているのでしょうか。

練りきりとはどのような和菓子?

練りきりとは、季節の風物などを写しとって作られる芸術的な和菓子で、白あんとつなぎを混ぜ合わせた、練りきり生地から作られます。※1

和菓子は水分量の違いで、生菓子、半生菓子、干菓子の大きく3つに分けられます。練りきりは水分を多く含む生菓子に分類され、その中でも芸術性が高い上生菓子とされる代表的なお菓子です。お祝いの席や、特別なお客様へのおもてなしのお菓子として用いられるほか、お茶席の濃茶に合わせるお菓子として、季節に合わせた練りきりが振舞われます。

練りきり生地は、白のこしあんがベースです。鍋に白あんとつなぎになる求肥などを入れ、木ベラでしっかりと練りながら作られます。作る工程でよく練ることから「練りきり」との名前が付けられました。なお、京都では練りきり生地のつなぎにつくねいも(別名やまといも)を使うなど、地方や和菓子店によって使われるつなぎに特色があります。

鍋の中で練った生地は裏ごしして滑らかにし、生地が均一になるように混ぜたら、粗熱を取るために小さくちぎります。小さくちぎったものを再度ひとつにまとめてもみ込み、また小さくちぎる作業を何度か繰り返して練りきり生地は完成です。まとめてちぎる作業を繰り返すことで空気が入り、黄色がかったベースの白あんの色から、白い練りきり生地に変化します。

練りきりは、練りきり生地に色粉などで色を付け、四季折々の形が作られます。練りきり生地を白く仕上げることは、色合いの美しさにつながるのです。

ところで、「こなし」と呼ばれる練りきりによく似たお菓子があります。こなしは、白あんに小麦粉などを混ぜて蒸し、砂糖を加えて揉みこなした生地を使用します。練りきりよりも程良い弾力があり、あっさりとした風味が特徴。関西でよく見掛ける和菓子です。

和菓子を買うときに「練りきり製 小豆こし餡」「こなし製 小豆つぶ餡」「求肥製 栗餡」「きんとん製 小倉餡」というように生地・外餡と中餡の種類で説明されているのを見たことがあるでしょうか。花びら餅などは同じ名称の和菓子でも地域やお店によって生地が違うものもあり、このような表記を見ることでどんなお菓子か想像してみることができ、さらに和菓子を楽しめるでしょう。

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季節を彩るために練りきりに欠かせない道具


練りきりのデザインには定番の形もありますが、基本的に決まりはありません。植物や動物、季節の風景など、自然のモチーフを写実的に表すほか、抽象的に表現します。豊かな色彩も魅力のひとつです。

色付けから形作りは、職人の技が光ります。練りきりに合わせて絶妙に色を付け、さまざまな道具を使って繊細なフォルムを作り上げます。

練りきりを作る時に欠かせない道具は三角べらです。三角柱の形をした木製のへらで、それぞれの辺を押し付けて、線を付けるために使われます。三角べらの3つの辺は全て同じではありません。角度が異なる2辺で線の太さを変えられ、残りの1辺では2重線が付けられます。見た目はシンプルな道具ですが、練りきりの繊細な造形美を作ることができるのです。※2

細い線を均一に付けたい場合は、千筋板(せんすじいた)が使われます。板の一面に平行に線が彫り込まれている道具です。練りきり生地を板に押し付けて、筋模様を表現するために使います。

そのほかにも、植物などが彫刻された木型で美しい形を抜き出したり、花びらや葉の形を切り抜けるステンレス製などの抜き型を使ったりして、練りきりの美しい形が作られています。

練りきりを食べる時に用意したい菓子楊枝


一般的に和菓子は、手で割って食べるまんじゅうなど以外は菓子楊枝を使って食べます。練りきりを食べる時も同様に、菓子楊枝を使います。

菓子楊枝の中で代表的なものは「黒文字(くろもじ)」です。クスノキ科の黒文字という品種の木を削り、スティック状にしたもので、和菓子の切り分けから口に運ぶまでの用途に使います。

黒文字の樹木は香りが良く、削りたての黒文字は上級品。しかし、削りたての黒文字でなくても、水に浸すことで香りが引き立ちます。また、水分を含んだ黒文字は、あんこや皮が付着しにくくなるメリットもあります。黒文字を使う前には、水に浸すことが大切です。

お客様を自宅にお招きして練りきりを出す場合には、お皿に菓子楊枝を添えましょう。黒文字以外の菓子楊枝には、木製や竹製、銀製など、さまざまな素材のものがあります。練りきりを乗せる器の雰囲気に合うような菓子楊枝を選ぶのがおすすめです。

反対に、菓子楊枝が添えられた練りきりを食べる場面では、食べ方のマナーが気になるかもしれません。練りきりを食べる時には、まず菓子楊枝を使って一口大に切り分けます。そのまま切り分けた練りきりに、菓子楊枝を刺して口に運びましょう。

季節に合わせて作られる練りきりは、味だけでなく目でも楽しめる美しい形をしています。お店によって趣向が異なり、職人技が光る和菓子です。

最近は、抹茶やあずき、きなこなど、和食材のスイーツを中心に日本茶や紅茶を合わせた新しいスタイルの「和フタヌーンティー」も登場し、練りきりをはじめ、さまざまな和菓子が一度に楽しめると人気です。季節を感じながら和菓子を楽しんでみてはいかがでしょうか。
和フタヌーンティーとは? 練りきりをアフタヌーンティーで楽しむ