今、メディアで話題の「腸活」。腸内環境を整えることは、美容や心身の健康に良い影響を与えることから、実践している人が増えているようです。その「腸活」をサポートしてくれる栄養成分として、「オリゴ糖」に注目が集まっているのをご存知でしょうか?
最近では、シロップだけではなく、様々な商品が販売されています。なんとなく体に良さそうなイメージをお持ちの方は多いと思いますが、きちんとした知識を持って上手に「オリゴ糖」を日々の食生活に活用していただけるよう、詳しく解説していきます。
そもそも「オリゴ糖」とは?
「オリゴ糖」とは、糖質のグループ名で、実のところ明確な定義はなく、国内外の組織間で定義が異なっていますが、一般的には2~10個の糖が結びついた構造を持つものをいう場合が多いようです。その種類には様々なものがありますが、最近、腸活との関連で話題に上がるのは、人が食べても直接消化吸収しにくい特徴がある糖質を指すことがほとんど。
このような「オリゴ糖」は、胃酸や消化酵素でも分解されず、大腸まで届き、ビフィズス菌などの腸内にすむ善玉菌の栄養源となってそれらを増やす働きがあり、特定保健用食品として認められています。※1※2
オリゴ糖についてはこちらもあわせてご覧ください。
・腸活とオリゴ糖と腸内フローラとの美味しい関係とは!?
・黒糖ときび砂糖、オリゴ糖は体に良い?? 特徴と上手に活用するコツ
ヨーグルトなど発酵食品との違いは?
これまでは、腸活といえばヨーグルト、というイメージが持たれがちでしたが、今やその考え方は変わりつつあります。なぜなら、腸内環境を整えるために、私たちの健康に嬉しい働きをしてくれる善玉菌を食品から新たに摂ることだけではなく、腸内にすむ善玉菌のエサとなるものを摂ることも大切であることが明らかになってきたからです。
ヨーグルトなど生きた善玉菌を含む発酵食品は、「プロバイオティクス」といわれています。ただし、これらの菌は腸内にある程度の期間は存在しても、住み着くことはないことが明らかになってきたのです。よって、腸内にもともとすみついている善玉菌に、オリゴ糖や食物繊維などの「プレバイオティクス」とよばれるエサを与えて数を増やすことの重要性が提唱されはじめました。※3
「オリゴ糖」は、甘いけど太らないってホント?
実は「オリゴ糖」が注目されている理由は、腸活に役立つからだけではありません。食べても太りにくい糖質として、ダイエット中の方からも人気を博しているのです。
糖質には通常1gあたり4kcalのエネルギーがありますが、「オリゴ糖」は人の腸ではそのまま消化・吸収できない「難消化性糖質」であるため、比較的低カロリーであることが分かっています。かつてはノンカロリーといわれていましたが、近年の研究によってオリゴ糖は大腸で腸内細菌に代謝され「短鎖脂肪酸」となり大腸から吸収され、エネルギー源になることが明らかになりました。「短鎖脂肪酸」として吸収された場合、そのエネルギー量は、糖質として吸収された場合より少ないようです。腸内細菌叢や他の食事内容にも影響を受けるため、まだ全てのオリゴ糖に対して明確な値は算出されていませんが、例えば主にビート(甜菜糖またはさとう大根)から分離精製して得られる天然のオリゴ糖であるラフィノースは1gあたり2kcalとされています。
ビート(甜菜糖)に含まれるオリゴ糖についてはこちらでも紹介しています。
・甜菜が原料の甜菜糖とは 健康によい?
たくさん食べても太らないというわけではありませんが、甘さを感じるのに砂糖よりも低カロリーなので、置き換えて活用するとダイエット時に役立ちそうですね。 ※2※4※5
オリゴ糖のパワーを借りて腸活やダイエットの効率アップに!
どんなに体に良いといわれている食品でも、食べ過ぎには注意が必要です。
オリゴ糖を急に摂取すると下痢を起こしたり、おなかが張ったりすることがあることが分かっています。市販されているオリゴ糖製品の有効摂取量は、1日あたり2~10gといわれていますが、オリゴ糖に対する腸内細菌の「慣れ」を考えながら、毎日少しずつ摂取しましょう。
腸活やダイエットを成功に向けて、上手にオリゴ糖を活用していけたら良いですね!※3
<参考>
※1 厚生労働省「e-ヘルスネット|オリゴ糖」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-003.html
※2 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)|炭水化物」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586559.pdf
※3 厚生労働省「e-ヘルスネット|腸内細菌と健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
※4 菅原正義, オリゴ糖の特性と生理効果, ビフィズス(現:腸内細菌学雑誌), 1993年7巻1号 p. 1-12
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim1987/7/1/7_1_1/_pdf/-char/ja
※5 消費者庁「難消化性糖質及び食物繊維のエネルギー換算係数の見直し等に関する調査・検証事業報告書」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/research/2019/pdf/food_labeling_cms206_200424_02-2.pdf(全て2020-07-07参照)
ライタープロフィール
藤橋ひとみ(管理栄養士)
I’s Food & Health LABO.(アイズフードヘルスラボ)代表。毎日の食事で心身のトラブルを予防・改善できる社会の実現を目指し、フリーランスの管理栄養士として活動中。 東京大学大学院、医学博士課程在籍。EBN(科学的根拠に基づく栄養学)の考え方を大切に、コラム執筆・監修、メディア出演等、健康情報を伝える活動や、食と健康の専門家のスキルアップ支援を行う。アトピーなど心身の不調を、食事改善で克服した経験から、毎日の食事で腸内環境を整えることの大切さを伝えている。また、大の大豆・発酵好きで、国内外にてその魅力を発信している。「腸活」をテーマにしたレシピ本「おいしく食べてキレイになる!おから美腸レシピ」が好評発売中。
ホームページ:https://is-food-health-labo.com/
ブログ:https://ameblo.jp/hitomi880807