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オリゴ糖は続けないと意味がない!? 効果を実感するために必要な期間とは?

オリゴ糖は今話題の「腸活」に役立つ成分として注目されています。ヨーグルトの場合は「2週間チャレンジ」とよく言われているように、毎日続けることが大切だというイメージが広がりつつありますが、オリゴ糖は一体どのくらいの期間続けると効果を実感できるのでしょうか。この記事では、そんな皆様の疑問にお答えしていきます。

近年、オリゴ糖が注目されている理由とは?

健康に有用な作用をもたらす生きた善玉菌である「プロバイオティクス」をヨーグルトなどの発酵食品やサプリメントなどを摂取して、外から新たにとり入れることが従来の「腸活」の定番でした。しかしながら、これらの菌は腸内にある程度の期間は存在しても、定着せずに出て行ってしまうことが明らかになり、腸内にもともと存在する善玉菌を増やす作用のある「プレバイオティクス」を摂取する方法がより一層注目されはじめました。

主な「プレバイオティクス」には、食物繊維とオリゴ糖がありますが、オリゴ糖は善玉菌として私たちに嬉しい働きをしてくれるビフィズス菌の大好物で、母乳にも含まれている成分です。実は母乳に含まれるヒト母乳オリゴ糖は、胎児の腸内のビフィズス菌を増殖させ、免疫機能をサポートしていることが明らかになっています。オリゴ糖は、大豆、たまねぎ、ごぼう、にんにく、アスパラガス、バナナなどの食品にも多く含まれているため、これらの食品を食事に取り入れるのも良いでしょう。また、効率的に摂取するには、フラクトオリゴ糖が含まれるオリゴ糖シロップなど特定保健用食品などで市販されているものを利用するのも一つの方法です。※1 ※2 

オリゴ糖と腸活についてはこちらもご覧ください。
腸活とオリゴ糖と腸内フローラとの美味しい関係とは!?

どのくらい続けると効果が出るの?

オリゴ糖の種類や摂取量の違い、個人差等もあることから、摂取後何日で効果が期待できるか明確な日数を言及している報告はまだありませんが、参考としていくつか研究データをご紹介します。

フラクトオリゴ糖8gを含む食品を50~90歳の成人23名に2週間にわたり1日1回摂取させ、摂取前、摂取期間中(4・8・14日目)、摂取後8日目の糞便フローラと糞便性状を検査した研究の結果では、摂取期間中、ほぼすべての対象者でビフィズス菌が著しく増加し、糞便内のビフィズス菌が摂取前に比較して平均約10倍も増加する顕著な増加がみられましたが、摂取中止後には菌数が減少しました。摂取中、糞便の硬さも改善され、フラクトオリゴ糖摂取前は軟便であった被験者では、オリゴ糖摂取によって便の硬さは徐々に改善され、摂取8日後に正常になりました。この研究では、摂取4日目にはビフィズス菌の明らかな増加が見られたため、オリゴ糖は摂取後数日で腸内細菌叢に影響を与え、中断するとその効果は持続しないと考えられます。

また、上記の研究の1日8gよりも少ない1日1g、3g、5gのフラクトオリゴ糖を27人の日本人成人に2週間与え、摂取開始前、摂取開始2週間後、摂取中断2週間後の腸内細菌叢と排便への影響を調査した研究でも、摂取開始2週間後にビフィズス菌の数の増加、排便回数の増加、排便に対する軟化効果が観察され、その他の便臭などの結果も踏まえ摂取を中断すると2週間後には元に戻ってしまう傾向にあることが分かりました。※3 ※4 

間違えた方法をとると大変!オリゴ糖をとる際の注意点

「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という諺があるように、どんなに体に良いと言われている食品であっても、適切な量を守って摂取することが大切です。オリゴ糖の場合も、もちろん該当し、摂りすぎると逆にトラブルを引き起こしてしまうことも・・・。

市販されているオリゴ糖製品の有効摂取量は、1日あたり2~10gです。オリゴ糖を突然多量に摂取すると、体質・体調によっては、下痢を起こしたり、おなかが張ったりすることがあるため、オリゴ糖に対する腸内細菌の「慣れ」を考えながら摂取するようにしましょう。多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありませんので、他の食品からの摂取量も考慮しながら、適量を摂取することが大切です。また、過敏性腸症候群(IBS)の方はオリゴ糖の摂取を控えることが推奨されていますので、注意が必要です。※1 ※5 

オリゴ糖のおすすめの取り入れ方はこちらでもご紹介しています。
黒糖ときび砂糖、オリゴ糖は体に良い?? 特徴と上手に活用するコツ

毎日の食生活に上手に取り入れよう!

オリゴ糖は、様々なメニューに砂糖の代替品として使えたり、身近な食品からも摂れる、私たちの食生活に活用しやすい特徴を持っています。摂取をやめてしまうと、その効果は継続しないため、適量を守って継続的に上手に活用することで、腸内環境改善など嬉しい働きをしてくれます。ぜひ注意事項を守りながら、皆さんの毎日の食生活にも取り入れてみてくださいね。
 

参考
※1 厚生労働省「e-ヘルスネット|腸内細菌と健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html

※2 Plaza-Díaz J, Fontana L, Gil A. Human Milk Oligosaccharides and Immune System Development. Nutrients. 2018 Aug 8;10(8):1038.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6116142/pdf/nutrients-10-01038.pdf

※3 光岡 知足, プレバイオティクスと腸内フローラ, 腸内細菌学雑誌, 2002 年16巻1 号 p1-10
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim1997/16/1/16_1_1/_pdf/-char/ja

※4 徳永 隆久, フラクトオリゴ糖摂取が健常人の腸内細菌叢および便通に及ぼす影響, ビフィズス1993年6巻, p143-150,
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim1987/6/2/6_2_143/_pdf/-char/en

※5 福土 審, 過敏性腸症候群の診療総論―現状と今後の展望―, 日本消化器病学会雑誌, 2019 年116巻7号p.543-551
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/116/7/116_543/_pdf/-char/ja
(全て2020-09-01参照)
 

ライタープロフィール

藤橋ひとみ(管理栄養士)
I’s Food & Health LABO.(アイズフードヘルスラボ)代表。毎日の食事で心身のトラブルを予防・改善できる社会の実現を目指し、フリーランスの管理栄養士として活動中。 東京大学大学院、医学博士課程在籍。EBN(科学的根拠に基づく栄養学)の考え方を大切に、コラム執筆・監修、メディア出演等、健康情報を伝える活動や、食と健康の専門家のスキルアップ支援を行う。アトピーなど心身の不調を、食事改善で克服した経験から、毎日の食事で腸内環境を整えることの大切さを伝えている。また、大の大豆・発酵好きで、国内外にてその魅力を発信している。「腸活」をテーマにしたレシピ本「おいしく食べてキレイになる!おから美腸レシピ」が好評発売中。

ホームページ:https://is-food-health-labo.com/
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