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糖質制限と血糖値スパイクの関係について


糖質制限ブームが続いている中、多くの医師・研究者が研究を行なってきたことで、メリット・デメリットや向いている人・避けた方が良い人など多くの知見が得られてきました。これまでも何回か紹介してきた血糖値スパイクとの関連に関しても色々とわかってきました。今回は糖質制限と血糖値スパイクの観点から見ていきたいと思います。

糖質制限のメリットとは??

改めて糖質制限のメリットについて考えていきましょう。糖質制限は糖質を完全に抜くことではなく、適度に糖質摂取を制限することが目的となるので、メリットも存在します。

具体的には、仕事の効率が上がったり、健康的に痩せやすくなったりするなどがあります。
また、糖質は体内で消化されると、水と二酸化炭素になりますが、この水によってむくみがひどくなることがあるため、糖質制限によってむくみが解消することも期待できます。
加えて、糖質制限によって、相対的にタンパク質摂取が増加することで、肌の調子が良くなったりするという作用も期待できます。

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糖質制限の向き不向き!!

糖質制限にも向き不向きがありますが、こちらも今一度復習してみましょう。
糖質は大量のエネルギーをすぐに作りたい場合のエネルギー源として有能なものです。余った場合には貯蔵糖(グリコーゲン)や脂肪の形で体に蓄積されます。

この特徴から、受験や部活をがんばらなければいけない世代の方、スポーツ選手、特に日ごろ頭脳労働を生業としている方たちには糖質制限はおすすめではありません。また、子どもをつくる際にも大量のエネルギーが必要とされるため、子どもを考えている方にもあまりおすすめはできません。

逆に向いているのは、高齢者、糖尿病などの生活習慣病の方、肥満気味の方、スポーツ選手を引退した直後の方などです。こういった方々では、比較的糖質をそんなに多くは必要とはしていない、もしくは必要としなくなっている状態のため、糖質制限することはそれなりに有効です。

血糖値スパイクはとても厄介?!

ランチを食べた後に強烈な眠気に襲われるといった経験をしたことがある方は少なくないと思います。これの原因となるのが「血糖値スパイク」です。
サラリーマンを筆頭に働いている大体の方のランチができる時間は1時間程度でしょう。いや、移動時間などを考慮すると、食べることに費やせる時間は実質30~40分程度かもしれません。この時間内に急いで食べると、血糖値が急激に上がります。これを下げようとしてインスリンが即座に大量に分泌されます。

このように、血糖値が急上昇した場合には、大量に分泌されたインスリンによって今度は急降下するという、まさにジェットコースターのような血糖値の乱高下状態に陥ります。これを血糖値スパイクと呼び、急激に低血糖になることで眠気などが生じるのです。

糖質制限と血糖値スパイクの関係とは?!

前述したように、多くの方で普通にランチをとるだけで血糖値スパイクに陥る可能性があると言えます。もちろん、ただ眠気だけなどでしたらさほど問題になりませんが、血糖値スパイクを繰り返すことで血糖値コントロールが正常にできなくなり、糖尿病などになってしまうこともあるので侮れません。

実はこの血糖値スパイクを最も効率よく防ぐのには糖質制限は有効なのです。
いつもランチの後に眠たくなるという方には、例えば、ランチメニューからごはんやパン、麺類などの糖質を減らしてみるなどおすすめです。最近では、どこのレストランや居酒屋でも糖質を野菜に変更できたり、ご飯の量を自由に選べたりするところもかなり増えてきましたので、誰でも割と簡単に行えるものと思います。

ただここで注意すべきは、いきなりご飯を無しにするなどという極端なことは避けるべきという点です。昨日まで普通に糖質を摂取していたのに、いきなりゼロにしてしまうと、体が悲鳴をあげかねません。
おすすめは、まずはご飯ならいつもの半分からスタートして、数日かけてさらにその半分にするなど少しずつ減らしていくと良いでしょう。

そして、血糖値スパイクをさらに上手に抑える方法としては、定食ならおかずを先に、丼や麺類なら具の部分から先に、各々食べ始めてから、糖質を摂取するという流れにすると、より血糖値の上昇を穏やかにすることができます。

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血糖値スパイクにならない適切な糖質制限を見積もる?!

どのくらい糖質制限をすれば血糖値スパイクを抑えつつ、かつ、ベストな血糖値になるのかという点に関しては、かなりの個人差がありますので難しいところです。

最近では、血糖値を個人レベルで気軽に測ってモニタリングできるようなキット(薬局やドラッグストアなどでも購入可能)やアプリなども存在するので糖質制限を始める際にはこういったものを利用しながら行うと後々のためには良いでしょう。血糖値スパイクは食後1~2時間程度で起こるとされているので、目安としては、食後2時間血糖値の値が140mg/dLを超えないようにすれば良いと言われています。実際に、IDF(国際糖尿病連合)がまとめた「食後高血糖の管理に関するガイドライン」においてもこの数値を超える場合には何らかの対処が必要であるとされています。

どうせなら科学的な数値をベースにした糖質制限によって効率良く血糖値スパイクを抑えたいといった方にはおすすめです。糖質制限を血糖値スパイクの観点からしっかりと理解して、快適な糖質ライフにつなげてください。

【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)

名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師ほか第一種放射線取扱主任者、甲種危険物取扱者、調理師など30以上の資格を保有。
現在は、国立大学法人東京工業大学キャンパスマネジメント本部
放射線安全部門 特任准教授
(国立大学法人東京大学医学部附属病院 届出研究員)
(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 客員研究員)
(公益社団法人日本アイソトープ協会 講師)