おせち料理! 基本の5種類と定番とは?
重箱に詰められたおせち料理は、お正月の食卓を彩る華やかな食べ物です。おせち料理には多くの種類がありますが、定番はどんなものなのか気になる方もいるでしょう。おせち料理として詰め合わせる料理の種類や定番に注目しました。
おせち料理を構成する基本の5種類
おせち料理は季節の節目である節句に用意される料理です。平安時代頃の宮中では神前に特別な食べ物をお供えし、節句を祝う料理で宴を楽しむ風習があったといわれています。江戸時代に入ると節句の中でもお正月が重要視されるようになりました。やがて、おせち料理といえば正月料理のことを指すようになります。※1※2
現代のおせち料理で基本の構成となっているのは、「祝い肴・口取り・焼き物・酢の物・煮物」の5種類です。祝い肴は酒の肴のことであり、黒豆・数の子・田作り(ごまめ)・たたきごぼうなどを指します。口取りは最初に出す料理のことで「口取り肴」の略です。口取りは祝い肴と同じく酒の肴になるものであり、かまぼこ・きんとん・だて巻き・昆布巻きなどがあります。焼き物は縁起が良いとされるエビやブリなどを焼いたもの、酢の物はなますのような箸休めになるもの、煮物は里芋やニンジン、こんにゃくなどを煮たものを指します。※1※2※3※4※5
多種多様な料理を重箱に詰めたおせち料理が一般に広まったのは、戦後の頃だといわれています。江戸時代のおせち料理は、数の子のみといった単品の祝い肴を詰めたものだったようです。※3
近年、百貨店やスーパーマーケットなどで扱っている市販のおせちには、重箱に基本となる5種類の料理を詰めたものがよく見られます。このような市販品よっておせち料理が全国的に知られる一方、地域独自のものも伝統として伝わっています。※2
おせち料理の盛り付け方はこちらで紹介しています。
・おせち料理を簡単に、美しく盛り付けるには?
様々な意味が込められたおせち料理
おせち料理は福を招いて災いを打ち払い、長寿を願って食べるハレの日の料理であり、用意する料理にもそれぞれ意味があります。例えば、表面にケシの実を散らして焼いた「松風焼き」には、「裏のない、隠し事のない正直な生き方ができるように」という意味が込められています。この松風焼きは自宅でも作ることができます。レシピは下記の記事でご紹介しています。※6※7
・おせち料理の「松風焼き」に込められた意味とは。松風焼きの作り方
伊達巻は巻物の形に似ていることから「知恵が増える」という学問成就の願いが込められています。トースターで簡単に作れる伊達巻のレシピは下記の記事でご紹介しています。
・【トースターで作れる!】甘さ控えめ伊達巻の作り方 適糖おすすめ献立New レシピ
昆布巻きは「よろこぶ」の語呂合わせから、数の子は子孫繫栄を願って用意されます。その他のおせち料理に込められた意味は、下記の記事で詳しくご紹介しています。
・おせちの中身には全部意味がある! 全部の由来言えますか?
これだけは用意する定番のおせち料理
日本人のライフスタイルは多様化に伴って食生活も変化し、おせち料理として食べるものも時代によって移り変わってきました。市販のおせち料理にはローストビーフや鴨のローストなど、洋風の料理が入っていることも珍しくありません。
京都の大学で行われた正月料理に対する学生の実態および意識調査によると、正月料理に食べたものの上位5つは黒豆・数の子・かまぼこ・栗きんとん・田作りでした。これらは年末のスーパーマーケットでもよく見かける品であり、今の時代にも伝わるおせち料理の定番といえるのではないでしょうか。また、これだけは用意する定番のおせち料理は家庭によっても異なると思います。※8
おせち料理の定番とされる栗きんとんは、さつまいもの餡に栗を加えたものです。しかし、栗きんとんと聞いて秋の和菓子を思い浮かべる方もいるかもしれません。和菓子の栗きんとんは、裏ごしした栗に砂糖を加えて茶巾絞りにした岐阜の銘菓です。和菓子の栗きんとんについては、下記の記事で詳しくご紹介しています。
・栗きんとんは岐阜の定番和菓子。おせちとは別のもの
おせち料理以外でお正月に食べるもの
お正月にはおせち料理だけでなく、お雑煮を作るご家庭も多いと思います。お雑煮はお正月を祝う行事食です。お雑煮に入れるお餅の形や汁は地域によって異なり、関東ではすまし汁に切り餅を入れ、関西では味噌仕立ての汁に丸餅を入れるのが一般的です。※6
また、島根県の出雲地方ではぜんざいのような小豆とお餅を食べるお雑煮が、香川県では白味噌仕立ての汁に餡を包んだ丸餅を入れるお雑煮が食べられており、地域によって特色があります。※6
新年に食べる和菓子としては花びら餅があります。花びら餅は餅と味噌を組み合わせることから「包み雑煮」とも呼ばれていました。花びら餅のルーツは宮中で行われた歯固めの儀式だといわれています。長寿を願う歯固めの儀式が変化を遂げ、お正月に食べる和菓子として現代に伝わったのです。花びら餅について詳しくは下記の記事でご紹介しています。※9※10
・平安時代から伝わる和菓子。お正月に食べる「花びら餅」とは
おせち料理が現在のような5種類の料理を詰める形になったのは、戦後以降だといわれています。今は元日からスーパーマーケットなどで買い物ができるようになったこともあり、お正月におせち料理を用意しないという家庭も増えているようです。今後、日本の伝統的な食文化ともいえるおせち料理が、どのように変化していくのか気になるところです。
<参考>
※1:たべもの起源事典 岡田哲
※2:年中行事事典 田中宣一 宮田登
※3:近代におけるおせち料理の形成と婦人雑誌 山田慎也
https://rekihaku.repo.nii.ac.jp/record/2263/files/kenkyuhokoku_197_12.pdf
※4:祝い肴
https://kotobank.jp/word/%E7%A5%9D%E3%81%84%E8%82%B4-1494251
※5:口取り
https://kotobank.jp/word/%E5%8F%A3%E5%8F%96%E3%82%8A-55480
※6:和食 日本の伝統的な食文化
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/pdf/guide_all.pdf
※7:松風焼き
https://kotobank.jp/word/%E6%9D%BE%E9%A2%A8%E7%84%BC%E3%81%8D-1496226
※8:正月料理に対する学生の実態および意識調査
http://repo.kyoto-wu.ac.jp/dspace/bitstream/11173/2582/1/0120_013_005.pdf
※9:和菓子の世界 中山圭子著
※10:美しい和菓子の図鑑 青木直己監修