美味しいパンが簡単に手に入る時代。原料にこだわったものも多く、パン屋さんではどれを選ぶか目移りしてしまう方も多いのではないでしょうか? 何となく『体に良い』というイメージのあるライ麦パンはダイエット中にも良いのでしょうか? ライ麦の栄養成分について解説します。
ライ麦って何? 小麦とライ麦の違い
ライ麦とは小麦と同じイネ科の植物です。見た目は小麦と似ていますが、生育環境は異なります。小麦はアメリカや中国、インドなど世界各地で生産されていて、日当たりが良く、肥沃な土地でしかうまく育たないといわれています。一方で、ライ麦はドイツやロシア、ポーランドといった北欧の寒冷でやせた土地でも育ちます。世界一パンの種類が多いといわれているドイツでは小麦が育ちにくいため、ライ麦パンが多く食べられています。
小麦粉と同様に、外側の胚芽を取り除き、内側の胚乳を粉砕したものがライ麦粉としてパンの原料によく使われています。胚芽が付いたまま挽いたものは全粒粉のライ麦として、パンや菓子に使われ、素朴な香り、食感をプラスすることができます。また、ビールの原料として使われることもあります。
ライ麦パンの特長
ライ麦パンに使われるライ麦粉は小麦粉と違い、水と合わせた際にグルテンという粘りや弾力のもとになる成分を形成しないため、生地を発酵させた際に生じたガスを包み込むことが難しく、小麦粉で作ったパンのようにふっくらした食感にはなりません。そのため、生地は目が詰まってずっしりと重みがあり、固さもあるため食べ応えがあるのが特長です。 ライ麦パンの発酵には「サワー種」という酵母菌が使われます。小麦粉で作ったパンよりも酸味があり、ライ麦パン特有の香りがあるのはこのためです。
ライ麦粉と小麦粉の栄養成分の違い
パンの原料として使われるライ麦粉と小麦粉の栄養成分を比較すると、エネルギーやたんぱく質量、脂質量については大きな違いはありません。そのため、ダイエットのためにライ麦パンを選んでも摂取エネルギーを抑えることはできません。
しかし、ライ麦粉と小麦粉に含まれている食物繊維の量には大きな差があります。小麦粉は100gあたり食物繊維総量2.5gなのに対し、ライ麦粉は100gあたり食物繊維総量12.9gと、ライ麦粉のほうが圧倒的に多く含まれています。※1
食物繊維は食後の血糖値の上昇を緩やかにし、食後に分泌されるインスリンという血糖値を下げるホルモンの分泌を抑えます。たくさん分泌され、余ったインスリンは脂肪として蓄積されてしまうため、ライ麦パンで食物繊維をとり、血糖値の上昇を抑えることはダイエット中には良さそうですね。また、小麦粉で作ったパンよりも固さがあり、よく噛むことで早食いを防ぎ、食べ過ぎ防止にもつながります。※2
ライ麦のダイエット効果についてはこちらでも紹介しています。
・ライ麦とは、ライ麦は痩せる? 太る? 体にいいの? 管理栄養士がわかりやすく解説します。
ライ麦は小麦よりもミネラルが豊富
ダイエット中は食事を制限するあまり、体に必要な栄養素が不足してしまいがちです。小麦粉よりもライ麦粉に多く含まれているのがミネラルの一種である、鉄やマグネシウム。鉄は全身に酸素を運ぶ赤血球の成分となるため、鉄が不足してしまうと、体が酸欠状態になり集中力の低下や、頭痛、食欲不振、疲労感といった貧血症状が起こることがあります。また、マグネシウムは骨の健康や多くの代謝反応、さらには心の健康にも関与しており、マグネシウムが不足すると、抑うつ感が生じることもあります。※3※4
ダイエット中に極度の食事制限をすると、エネルギー不足から倦怠感を感じることや、ミネラル不足による心身の不調が起こる可能性があるため、注意が必要です。全く食べないダイエットではなく、量をコントロールしながらバランス良く食べるダイエットが良いですね。ミネラルを補える主食としてライ麦パンはおすすめです。
ライ麦パンの種類のなかでどれを選べば良い?
ライ麦粉は小麦粉よりも食物繊維やミネラルが多いことはわかりましたが、ライ麦粉の配合比率が多いパンは酸味が強いため、小麦粉を使ったパンに食べ慣れている方は少し食べにくく感じるかもしれません。
一方、スーパーで売られているライ麦食パンは、ライ麦粉の配合比率が5%程度と少ないものが多く、食べやすさはありますが、ライ麦粉に多く含まれる食物繊維やミネラルの摂取についてはあまり期待できません。
ライ麦パンはライ麦粉と小麦粉の配合比率によってパンの名称が異なります。食べやすさとライ麦粉の栄養成分を期待するのであれば、ライ麦粉の配合比率が10~50%程度のものがおすすめです。ライ麦粉10~50%未満のパンは「ヴァイツェンミッシュブロート」といいます。酸味が少なく食べやすいため、ライ麦パン初心者の方には良いでしょう。ライ麦粉と小麦粉の配合比率が同じものは「ミッシュブロート」といい、ライ麦特有の酸味や香りを感じつつ、食べやすさもあります。※5
パン屋さんで選ぶ時には、パンの名称もぜひチェックしてみてくださいね。
ライ麦パンをはじめ、世界各国のパンの特長はこちらもご覧ください。
・食パンやフランスパンの種類とは?各国の代表パンとオススメの食べ方
ライ麦パンのおすすめの食べ方は?
ライ麦パンはそのまま食べるよりも相性のいいチーズやバターといった乳製品を塗ったり、サンドイッチのように旨味の濃い食材をはさんだりして食べると美味しく食べることができます。ライ麦粉の割合が多いほど、ずっしりと酸味があるため、薄くスライスすると良いです。また、トースターでこんがりと焼くよりも、温める程度のほうがおすすめです。
ダイエット中は、野菜でビタミンや食物繊維をプラスして、たんぱく質源のハムやサラダチキン、スモークサーモンなどをはさんだボリュームと栄養たっぷりのサンドイッチにしてみてはいかがでしょうか?
ライ麦パンを使った栄養満点のレシピはこちらもご覧ください。
・【ライ麦パンのレシピ】ツナときのこのクリーミィトーストの作り方 適糖おすすめ献立New レシピ
・【ライ麦パンのレシピ】ココアフレンチトースト焼きバナナのせの作り方 適糖おすすめ献立New レシピ
【参考資料】
※1 文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
※2 ※2 厚生労働省 速食いと肥満の関係 -食べ物をよく「噛むこと」「噛めること」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-10-002.html
※3 厚生労働省 e-ヘルスネット、鉄
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-022.html
※4 厚生労働省 e-ヘルスネット、マグネシウム
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-034.html
※5 鳥越製粉株式会社HP ドイツパンとは
https://www.the-torigoe.co.jp/euro/deutsches/bread.shtml
ライタープロフィール
渥美 まゆ美
【管理栄養士/フードコーディネーター】
保育園栄養士、健保組合、大手料理教室の講師を経てフリーランスで活動後2016年株式会社Smile meal設立。
現在は出版、メディア出演、レシピ開発など体にプラスな料理の提案をすると共に、企業向け健康セミナーの講師や従業員の健康をサポートする料理教室、高齢者向け介護予防教室など健康サポート事業にも携わる。