糖と健康

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理由のないイライラの原因は糖不足って本当!?

なぜかわからないけどイライラしたり、不安になったりするという症状を経験したことはないでしょうか。原因がはっきりしないので、対処が難しく、病院を受診したとしても、うつ症状と診断されるだけということも少なくないのですが、そこには糖が関わっていると言われています。今回はイライラと糖との関係を見ていきましょう。


そもそも血糖値はどうやって調整されているの??

食事を終えた後、血糖値は上昇しますが、この上昇を抑えて正常に戻すためにインスリンというホルモンが働きます。そして、長時間食事をしないなどで血糖値が下がってくると、逆に血糖値を上げるホルモンが働き、血糖値をほどよく上げようとします。この繰り返しにより、血糖値は巧みに調整されているのです。ちなみに、血糖値を下げるホルモンは前述したインスリンだけなのに対して、血糖値を上げるホルモンとしては、グルカゴン、アドレナリンなど複数存在しています。これは、元来、人類は長きにわたって飢餓に苦しんできたことで、遺伝子にその記憶が刻まれたためと言われています。近年でこそ、食べたいときに食べたいだけ食べることが可能な方が多いですが、狩りが主流であった時代においては、なかなか食糧にありつけなかったため、日々飢餓状態でした。その中でも生きていけるように、血糖値を上げる機構の方が増えたと考えられています。飽食の時代の現代においては、少し話が変わってしまい、そのことが逆効果となって、糖尿病などの病気になってしまう方が増えてきたのです。人類にとっては低血糖が長く続くことの方が問題になるということが理解できると思います。

低血糖になるのは高血糖が原因?!

前述したように、もともと血糖値を上げるホルモンがたくさん存在するため、低血糖状態に陥ることは現実的には少ないということになり、低血糖になる人の原因としては、高血糖だと考えられています。食後に血糖値が上昇した場合には、通常すぐにインスリンが分泌されるのですが、このタイミングが遅い人が一定数存在します。こういった方が、炭水化物や甘いものを一気に食べ過ぎてしまった場合に、食後高血糖状態となりますが、インスリン分泌が遅いため、分泌される際には、過剰量のインスリンが分泌されてしまい、血糖値が急降下します。こういったことが繰り返されると、脳の認識が麻痺して、血糖値が正常であっても下がり過ぎていると判断してしまう状態になってしまうのです。これを「反応性低血糖」と呼びます。多忙な現代においては、食事が不規則になりがちで、無意識のうちに反応性低血糖になっている人が増えていると言われています。

反応性低血糖になるとどうなるのか??

反応性低血糖状態になっているかどうかの目安としては、食べたばかりなのに、なぜか空腹を感じるという状態です。通常、血糖値が下がっていると、脳が命令を出してお腹が空いていると感じるのですが、そもそも脳の認識が麻痺してしまっていることで、実際にはそんなに血糖値が下がっている訳ではないのに、空腹を感じてしまうのです。そして、空腹を感じることでイライラしてしまうということにつながっていきます。子どもが、「お腹が空いた~」と言って不機嫌になっているのをよく見かけますが、これは別に子どもに限ったことではなく、大人でも起こりうる現象で、前述した血糖値を上げるホルモンが関わっています。低血糖になると、血糖値を上げるべく、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌されますが、過剰な分泌は不安になったり、イライラしたりしやすくなるので、これによってイライラしてきます。そうすると、これを解消すべく、糖分を摂取するのですが、アドレナリンやノルアドレナリンが存在している状態で糖分を摂取すると血糖値が急上昇してしまいます。それに反応して、インスリンの過剰分泌が起こり、血糖値が急降下するという悪循環に陥ります。

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食後高血糖を防ぐためには??

1日1回の食事が健康に良いという説があることから、実践されている方もいるかと思いますが、かといって、この1回でたくさん食べてしまったのでは前述した反応性低血糖になってしまう可能性があり逆効果です。1日に何回かに分けて、1回あたりの量を減らすことが有効です。また、ストレスによってアドレナリンなどが分泌されてしまうため、ストレスをため込まない、そして、ストレスを解消しようと食べ過ぎることも避けましょう。イライラしながら糖分をとっても幸せを感じないため、できれば楽しい気分で糖分を取りたいところです。ぜひ、上手な糖生活を送ってください。

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【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)

名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師、理学博士のほか10種類くらいの資格を持つ。
現在は、東京大学医学部附属病院 放射線科 核医学部門  助教&「放射性医薬品の管理責任者」、環境省「原子力災害影響調査等事業」メンバー、日本アイソトープ協会 放射線取扱主任者講習・作業環境測定士講習講師、リクルートメディカルキャリアコラム執筆など本業の合間に、わかりやすくサイエンスを伝える活動に力をいれており、近年は全日本情報学習振興協会にて講師としてYouTube動画の配信も行っている。
【全日本情報学習振興協会YouTube】
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