マテリアリティの特定
カンロは糖を基盤とした事業を通じて社会問題の解決に寄与しながら、企業価値を向上させるため、2018年度にマテリアリティを再特定し、2021年、2025年に見直しを行いました。
特定プロセス
- SDGs、ISO14001、GRIスタンダード等の各種ガイドライン・規範をベースに社会的な要請を抽出
- 抽出された社会課題を元に各役員へのヒアリング
- 社外有識者へのインタビューを通じてカンロへの期待・要請を抽出
- 特定されたマテリアリティを経営会議で承認
- 5つの活動領域ごとに社内ワーキンググループを立ち上げ
- 5つの活動領域ごとにKPIを設定
KPI一覧
マテリアリティ | アプローチ | KPI | |
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糖の価値創造 | 健康福祉の増進 | 糖に対する正しい知識の普及活動を実施する |
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健やかな生活に寄与する商品・サービス開発 | |||
食の多様性への配慮 | 多様な文化に対応する商品開発 | ||
事業を通じた環境負荷削減 | 気候変動 | 温室効果ガス総排出量(Scope1,2,3)を削減する |
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サプライチェーンにおけるサステナブル調達(環境影響側面) | |||
資源循環と廃棄物削減 | 食品廃棄物を削減する(売上高原単位) |
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商品容器に環境にやさしい素材(バイオマス・生分解性・リサイクル素材・紙等)を使用 |
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使用するエネルギーを削減(生産重量原単位) |
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食の安全・安心 | 商品の安全衛生 | 原料、製造委託先の品質リスク評価に基づき、品質審査を計画的に実施 | |
消費者品質満足度の向上 | |||
責任あるマーケティングと表示 | ユニバーサルデザインを意識した商品設計 | ||
人権の尊重・ダイバーシティの推進 | 人権の尊重 | 人権デューデリジェンスの実施 | |
サプライチェーンにおけるサステナブル調達 (人権側面) | |||
多様な人財の活躍 | 多様な人財を活かし、価値創造につなげる |
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健康と安全を確保し、安心して活き活きと 働ける職場を整備する |
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組織統治 | ガバナンス | ステークホルダーへの説明責任を重視する | |
コンプライアンス意識の向上 | |||
リスクマネジメント強化 | |||
情報セキュリティの強化 |
有識者へのインタビュー

立教大学 経営学部 教授
高岡 美佳 氏
カンロが糖についての正しい理解を促進すること、特にメリットについてメッセージを発信する活動は極めて重要だと考えます。
また、近い将来、小売や流通などの取引先・納入先からの調達に関するCSRの要請はますます強まるでしょう。カンロの調達基準に社会・環境の基準を含めるのは必須ですが、まず最初のステップとして、現状やリスクを把握することから始めるべきだと思います。さらに、サプライチェーン全体の中に自社があるという意識を持つという意味でも、今後はスコープ3への対応が必要になると考えています。何か一商品でもよいので、ライフサイクルアセスメントを実施してみることも効果的なのではないでしょうか。

サステイナビジョン 代表取締役
下田屋 毅 氏
現状では、原材料調達やサプライチェーンに関わる課題認識を高める必要があると感じます。特に企業活動に関わる人権、労働者の権利、また原材料調達の課題に関する意識は、消費者や市民社会など社会全体からの注目度が高くなっています。またESG投資の観点からもこれらの項目は事業の持続可能性評価を行う際にも極めて重要となります。原材料がどこから来ているのか、どのように製造されているのか、また何が社会課題なのかを把握し対策するとともに、環境課題として自社のサプライチェーンに気候変動がどのように影響を及ぼすのかについての認識とその対策を行うことも必要となります。そして何より基本となるのは、ステークホルダーとのコミュニケーション/エンゲージメントです。カンロの重要なステークホルダーを特定した上で、それらステークホルダーがカンロのことをどう考えているかの声を聞き、マテリアリティ(重要性)を特定すること。またそのマテリアリティを基本として行動を行い、その上でカンロとして積極的に結果や進捗状況に関する情報開示を行っていかれることを期待します。

CSRアジア日本代表
赤羽 真紀子 氏
てんさい糖などの重要な原材料のトレーサビリティを確保することは、カンロのビジネスにおける価値創造の観点から見ても重要であると考えられます。この点がクリアできると、品質への信頼感醸成や、サプライチェーン上の人権リスクの低減などにつなげることができます。また、原材料生産地へのキャパシティビルディングを産学協同で進めるなど、社会貢献的なアプローチも可能性を検討してみてはいかがでしょうか。
昨今は廃プラスチックなど容器包装の環境対応への注目が高まっており、対策の有無が取引に影響する懸念もあります。取引先の調達基準が変わることも予想され、対応に向けた準備を着実に進めていく必要があると考えられます。